本研究は実験者から学習者に運動遂行前に与えられる快/不快感情を喚起するメッセージ(前者をPM、後者をNMとする)が運動学習に及ぼす影響について検討することを目的とした。研究実施計画は3年度にまたがって計画した。研究課題は2つ設けられた。一つはPM/NMの収集を目的とした調査研究であった。他方は運動遂行前のPM/NMが感情や生理的反応、反応時間や運動学習に及ぼす影響について検討することを目的とした実験研究であった。研究は計画通りに実施できたが、最終年度(令和元年度)に実施する予定であった実験で使用する機器が故障したため補助期間を1年延長し、実験を実施した。 令和2年度に実施した実験は、運動前に与えるPM/NMがCPUモニター上に視覚刺激が提示されるまでの注意の強度とその刺激に対する反応時間に及ぼす影響について検討することを目的として、大学生を被験者として実施した(この実験は平成29年度に行った実験の再実験である)。注意の強度を評価する指標として脳波を測定し、随伴陰性変動(CNV)を抽出した。分析の結果、PM(「頑張れ!」など)を聴取させるとNM(「ちゃんとやれ!」など)を聴取させるよりも反応時間が速かった。しかしながらCNVにメッセージの違いによる差異は示されなかった。つまり、感情喚起メッセージは刺激提示に対する注意の強度というよりは、注意の方向づけ(PMは視覚刺激に、NMは言葉の解釈)に差異をもたらした可能性があると推察された。今後、本実験の成果を国際学会に発表する予定である。 また、平成30年度に実施した実験(「運動遂行前の快または不快感情喚起メッセージが運動パフォーマンスと気分に及ぼす影響」)の成果を国際学会で発表し、同志社スポーツ健康科学に投稿し受理された。 本研究の成果をまとめ、科研費(基盤研究(C))に申請した。
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