研究課題/領域番号 |
17K01652
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
竹田 正樹 同志社大学, スポーツ健康科学部, 教授 (00278459)
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研究分担者 |
廣安 知之 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (20298144)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高齢者 / 認知機能 / ウェルネスダーツ |
研究実績の概要 |
ダーツという運動は,身体活動そのものは決して高くはないが,そのルール上,足し算,引き算,かけ算などの算数を多用しながら行うゲームであり,特に運動中にわざと頭を働かせようと意図せずとも,自ずと計算課題をしながら行える大変ユニークなスポーツである.本研究では,高齢者の認知機能低下を予防する目的で,高齢者用に適したウェルネスダーツを開発し,認知機能改善効果や低下抑制効果を検証することを,生理学的,脳科学的,そして社会科学的に明らかにするものである. 当該年度においては,測定方法の確立を目指し,ウェルネスダーツ時の機能的近赤外分光法(fNIRS)による脳賦活領域の計測と検討を試みた.被験者は大学生とし,椅子に座った状態でfNIRSの電極を頭部に着け,そのまま,できるだけ頭部を動かさないように注意しながら2.1m先の壁に取り付けたウェルネスダーツボードに向かって矢を投げさせ,その際の脳賦活領域を計測した.その際,自らの意思で的を狙う条件(意思決定あり)と,験者からの指示で的を狙う条件(意思決定無し)の2通りを試行させた.ダーツはゼロワンゲームという方式を用い,持ち点が256点から0点になるまで試行させた.毎回3本の矢を投げさせて,その合計値を持ち点から暗算で引かせた.その結果,意思決定ありとなしの2条件間で,脳の賦活部位が異なる様子が観察された.測定は何回かの思考の末,ほぼできるようになったと考えられる.しかし,脳賦活領域の賦活度合いの定量化の方法についてはまだ未解決であり,また被験者数が5名と少ないことから統計処理もできていない.今後の課題は,脳賦活程度の定量化と被験者数の増加および統計処理である.これらは2018年度前半のうちに出来るように検討したい.2018年度後半にかけては高齢者を対象としたデータ取得に取り組みたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間全体で3年間を確保しているが,1年目は方法論の確立を目指していた.というのも,fNIRSはできるだけ頭を固定しながら計測しなければならないが,ダーツ中に同計測が可能なのかどうか,どのようにすれば頭をできるだけ動かさないようにできるのか,計測できたとしても測定結果にノイズがどの程度混入しているか,ノイズのキャンセルはできるのか,脳賦活程度の定量化はどのようにするのか,さらに,ダーツ中に思考を伴う条件と伴わない動作だけの条件をどのように作り出すのか,など,測定方法そのものが心配された. いくつかの試行方法を繰り返す中で,2条件間のfNIRSに違いが認められたことから,最終的には測定できることを確認できた.予想以上の進捗状況とは行かないかもしれないが,本研究に光が差してきた感があるので,概ね順調に進展したと自己評価している.
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今後の研究の推進方策 |
脳賦活領域の賦活度合いの定量化の方法についてはまだ未解決であることから,先ずはその問題に取りかかりたい.被験者数が5名と少ないことから統計処理もできていないが,この点については,被験者数を増やすことで解決可能である.被験者は継続的に学生を予定している.これらは2018年度前半のうちに出来るように作業をすすめたい.2018年度後半にかけては高齢者(70歳前後)を対象としたデータ取得に取り組みたい.被験者数はおよその目標として15名を考えている.ただし,fNIRSの計測中は頭部につけた電極が重量があるため,時間経過と共に頭部の痛みとして出現して来る.学生では何とか耐えられないことはなかったが,学生被験者の印象では高齢者でそれが可能かどうか,やや疑問が残るとのことだったので,電極を上部から支える方法を考えなければならないと感じている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度で予定していた人件費が予定通り執行できなかったことが主な原因である.実験は行ったが,先ずは研究手法の確立が主な目的であったため,被験者を研究室外の外部の者には委託しなかった.研究室内部で研究を実施していたため,費用は発生しなかった.2018(平成30)年度以降は被験者を外部に委託し,データ主周する予定で進めている.
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