研究課題/領域番号 |
17K01654
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
石田 智巳 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (90314715)
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研究分担者 |
加登本 仁 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (40634986)
制野 俊弘 和光大学, 現代人間学部, 准教授 (70795153)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 実践記録 / 体育教師 / 語り直し |
研究実績の概要 |
今年度は,主として二つの課題を用意していた。一つは,保健体育教師のナラティヴの変化を実践記録の分析をもとに行うことである。もう一つは,若い体育教師へのインタビューを通して,その教師のこれまで描いていた保健体育としての教師の語りが変容していく様子を跡づけることであった。 前者については,体育における古典といわれる実践記録である『体育の子』をはじめ多くの実践記録を残した佐々木賢太郎の語りの変化を見いだすことができた。とりわけ,1956年から1960年の資料を分析することを通して,体育実践の語りの変化を見いだした。より具体的なところでいえば,佐々木は体育授業で子どもの認識を重視したが,子どもの認識は集団での学習の中で,発見に始まり,発見を持ち寄って照合し,それをみんなで確認し,新たな創造を目指していた。このうちの確認については,1957年から1959年にかけて,「仲間と交流することで確認する」,「綴ることで確認する」,「発見を照合をすることで確認する」ことへと少しずつ変化させてきたことを明らかにした。そして,これらの変化は,単に佐々木自身の問題意識の変化にとどまらず,佐々木が所属した紀南教育研究会のおかれた状況にあわせて起こったことを明らかにした。とりわけ,この時期は勤務評定闘争や学習指導要領の改訂があり,実践を変化させざるを得ない外圧が佐々木や研究会にのしかかったのである。 二つ目のインタビューは,2月にお願いして,3月(学校が閉校になった時期)に第1回目を行い,第2回目を行おうとしていたところ,新型ウィルスの影響で上京することができなくなってしまった。そのため,次年度に期待を込めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,共同研究者とともに2月から3月にかけて,若い教師へのインタビュー,若い教師の実践記録の書き直しのプロセスを探ろうと思っていた。前者については,実績にも書いたように,1回目のインタビューは終えているが,その後ストップしたままである。また,後者については,3月に入って動きがとれなくなってしまったので,次年度の課題となった。それでも,実践記録の分析は,査読のある学会誌(『体育学研究』)に掲載されたため,おおむね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
新型ウイルスの影響が収まってから調査研究に出かけるため,現時点では未定である。インタビューについては,場合によってはWeb会議の形式を取らざるを得ないかもしれないが,このことがラポール形成にどのような影響を及ぼすかわからないので,やや不安なところもある。また,研究協議会の分析がうまく行われない場合は,これもインタビューに切り替えるなどが必要である。いずれにしても,次年度が最終年度になるため,これらも含めてまとめに入る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で,3月に行おうとしていた調査に出かけることができずに,主として旅費が未執行となった。現時点でも計画は立てられない状況にあるが,再開が可能になったら,今年度未執行分もあわせて計画的に使用していきたい。
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