研究課題/領域番号 |
17K01664
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
中込 四郎 国士舘大学, 体育学部, 特別任用教授 (40113675)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アスリート / 事例 / ナラテフィヴ / スポーツカウンセリング / グループ箱庭 |
研究実績の概要 |
アスリートの競技力向上・実力発揮を目的としたカウンセリングアプローチ(ナラティヴアプローチ)の有効性ならびにその機序を明らかにすることを目的に、本年度は以下の課題について検討がなされた。 ・カウンセリングならびに心理療法における心理相談の有効性や治療理論について関連の図書を参照し、本研究計画で仮説的に設定した4つの効果機序について検討した。また、近年のスポーツ心理学ならびにメンタルトレーニングで関心が払われている「マインドフルネス」「ハーディネス」「レジリエンス」と、J.キーツの提唱した「ネガティブ・ケーパビリティ」(負の受容力、葛藤保持能力、消極的受容能力、ほか)との関連性についても検討を行い、継続課題となった。 ・「大学卒業後”もう少し<競技を>続けたい”と来談した競泳選手の心理サポート事例」と題して相談事例をまとめ、そしてクローズドな研究会で発表し、意見を求めた。本事例に対して、2年3ヶ月の間に57セッションの相談が行われた。いくつかの内的変化が認められたが、そのなかで特に、個の確立あるいは自己信頼感の向上がその後の実力発揮の心理的背景に認められた。 ・チームスポーツのメンタルトレーニングと位置づけ、「グループ箱庭」技法を適用したこれまでに本研究代表者が関わってきた実践例を再分析、検討した。その結果、当初まとまりのなかった箱庭作品がセッションを重ねるに従って、共通のイメージが共有された作品となっていった。その背景には、箱庭作業を通じてメンバー間でのコミュニケーションが促進され、自己他者理解が深まり、さらにチームが抱える競技現場での課題への取り組みの触媒となっていたことが考えられた。グループ箱庭の適用については、さらに研究期間内に異なるスポーツ種目のチームからの協力を得ながら実施し、その有効性の機序ならびに実施上の留意点、他をより明確にしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者がこれまでに行ってきたアスリートの相談事例についてもう少し分析資料を増やすすべきではあったが、全般的には、「おおむね予定通り進んでいる」と受けてめている。
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今後の研究の推進方策 |
近年、ナラティヴアプローチにおいては、単に研究方法や研究者側の情報収集と位置付けるのではなく、情報提供者が特定の課題に基づいて自身のライフストーリを語り直すことにより、内的変容が期待されている。こうした視点は、カウンセリングや心理療法と重なるところがあり、アスリートが広義のパフォーマンスを振り返るあるいは語り直すことの意味を明らかにする手がかりともなる。特に、アスリートの場合は、身体や動きの語りが多く、それらの語りを通してどのような心理的作業が共時的になされているのかに注目する必要が有る。本年度は、引き続き相談事例の分析を行うと同時に、ナラティヴアプローチやライフヒストリー研究を扱った著書や論文を読み込み、本研究課題に取り組むことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、当初予定していた国内学会での発表なたびに研究情報の収集を見送ったこと、ならびに研究資料の収集、整理のための補助者の謝金の支払いが少なかったことがある。平成30年度はダブリン(アイルランド)での発表を予定し、そのおり、研究協力者1名の渡航費の補填を考えている。
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