研究課題/領域番号 |
17K01669
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高見 和至 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (50236353)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 習慣 / 習慣強度 / 身体活動 / 運動 / 喫煙 / パチンコ / 飲酒 / 歩行通勤 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「習慣強度の観点から運動習慣を各種健康関連行動と対比させ分析することで,運動や他健康関連行動の習慣化を促進するための新たな知見を提示すること」である.そこで,本研究では各講堂の背景にある心理変数としての習慣強度に着目し,共通した心理尺度(運動習慣強度尺度:髙見,2014・自己報告式習慣指標:Verplanken et al.2003)を用いて複数の健康関連行動を調査してきている. これまでに,運動・スポーツ以外で「喫煙」「飲酒」「歩行通勤」「パチンコ」の計5種類のデータ収集を終えていた.2019年7月に第15回ヨーロッパ運動・スポーツ心理学会において,運動スポーツ,パチンコ,喫煙データを用いて自己報告式習慣指標12項目の因子構造に関する発表を行った.分析の結果,各行動に特徴的な因子構造が見られた.運動・スポーツは2因子構造で「負担の無さ(代表的項目:私は自動的にやっている)」「自分らしさ(やらないようにするには我慢する必要がある)」で,行動の開始や継続の気軽さの程度が習慣化の要点になっている.同じく成人の余暇や趣味に当たるパチンコも2因子構造であったが,「欲求(やらないようにするには我慢する必要がある)」「熟練さ(すでに長い間,やってきている)」と解釈され,欲求の発現を伴う依存性の習慣強度が推察された.さらに,喫煙では累積寄与率約8割の単一因子構造が見られ,負荷量が高い項目は「毎日,毎週の決まり事のようになっている」「現在,頻繁に行っている」などであった.この結果は,行動と心理の一元的な連関を示唆するもので,定着した喫煙習慣の頑健さと消去する困難さの一因であると考えられる. また,上記の行動以外にも「自宅飲酒」と「歩行通勤」のインターネット調査が完了し,自宅飲酒は20-60歳代,歩行通勤も20-50歳代の男女155名ずつ各計310名のデータが収集できている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では,複数種類の行動に対するデータ収集が必要で,これまでに,運動・スポーツ,喫煙,自宅での飲酒,パチンコ通い,歩行通勤の5種類のデータが収集できた.引き続いて令和元年度に,別の行動の習慣強度をネットリサーチを用いて調査する予定であったが,ヨーロッパスポーツ心理学会での研究発表を行うことにしたため,調査に充当する予算が不足した.また,学会発表準備,他業務などで,自宅飲酒と歩行通勤のデータ分析が完遂しておらず,論文執筆まで至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度が最終年度に当たるため,研究成果の公表に努めたい.本研究は日本語の質問紙調査によるもので,日本における人間行動の研究に習慣強度の概念を導入することが目的での一つである.そこで,国内心理学系学会の学会誌への投稿,日本スポーツ心理学会,日本健康心理学会など国内学会での発表を行う予定である.新規調査については,調査内容や予算等を検討したうえで適宜実施したい.
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