研究課題/領域番号 |
17K01670
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
秋元 忍 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (50346847)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ホッケー / 女性スポーツ / イギリス |
研究実績の概要 |
イングランドにおける女性のホッケーの最初の統括組織、レイディーズホッケーアソシエーション(以下LHA)が活動を開始したのは、1895/96年のシーズンであった。以降、この組織は、二度の改名を経て、オールイングランドウィミンズホッケーアソシエーション(AEWHA)と称するようになり、女性のホッケーの全国的な統括組織として活動を展開していく。本年度は、LHAが活動を開始した1895/96年から、戦争の影響を受け一部のゲームが中止された1914/15年の直前のシーズンである1913/14年までの時期を対象として、LHA、AEWHAの加盟クラブの数とその範囲の変遷について、両組織のゲーム普及戦略を踏まえつつ明らかにした。続いて、その変遷の特徴を、男性の統括組織であるホッケーアソシエーションの加盟クラブの変遷と、AEWHA非加盟の女性のホッケークラブの団体の一つであるレイディーズホッケーリーグの加盟クラブの変遷との比較から検討した。以上から、1914年以前のイングランドにおける女性のホッケーの普及に果たした全国的統括組織の役割について、次のように評価することができた。1914年以前のAEWHAは、女性のゲームの統括組織として全国的普及を支援し、1900年代末にはAEWHA加盟クラブ・学校数はピークに達した。しかし1910年代から非加盟クラブの活動が活発化すると、加盟クラブ数は減少傾向に転じた。余暇に恵まれた女性たちの娯楽から、生活のために働く人々が熱狂し、参加するレクリエーションへの変化(Marjorie Pollard, Fifty Years of Women’s Hockey. 1945, p.19)には、まだ十分な対応がみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
7月末にイギリス研修旅行を実施し、女性のホッケー専門雑誌(The Hockey Field)、地域の女性ホッケークラブの内部史料、ホッケー関連年鑑等、本研究の遂行に不可欠な1次史料の調査、収集を進めることができた。その成果を「イングランドにおける女性のホッケーの全国的統括組織加盟クラブの変遷と特徴 1895/96-1913/14年」としてまとめ、2019年9月に開催された日本体育学会第70回大会において発表した。令和2年度中には原著論文として公表予定である。 これまでの3年間で、1)組織化以前のゲームの実施状況、2)女性単独の統括組織の設立、3)組織化以降のゲーム普及過程、という本科研の3課題については一定の研究成果が得られた。よって「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
この3年間の研究によって、1914年以前のイギリスにおける女性のホッケーの実施基盤は、これまで認識されていた以上に多様であることが明らかになった。よって、イギリス現地におけるより精緻な史料調査を追加実施する必要があると判断し、補助事業期間の延長を申請し、承認された。本研究で詳細な活動実態が解明されたガートンカレッジ、ロイヤルホロウェイカレッジのほかにも、ニューナムカレッジ、ウィンブルドンスクールなど、1890年代前半以降の活動実態を1次史料から再構成できる可能性のある女性ホッケークラブが存在する。最終年度は、これらのクラブの1914年までの活動実態を解明し、本研究の3つの課題についての検討結果を再検討する。そして、これまでの研究成果と合わせて女性のホッケーの普及に関する歴史像を提示し、近代スポーツの普及に関する従来の学説の中に位置づけ評価することによって、4年間の総括を行う。新型コロナウィルスの影響により、イギリスにおける史料調査が実施できない場合には、収集済みのホッケー関連雑誌の記事分析によって代替し、上記の目的を達成したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
1914年以前のイギリスにおける女性のホッケーのゲーム普及過程について、1)組織化以前のゲームの実施状況、2)女性単独の統括組織の設立、3)組織化以降のゲーム普及過程、の3課題を設定し、検討を行った。各課題について一定の成果を得たが、女性のホッケーの実施基盤はこれまで認識されていた以上に多様であることが明らかになったため、より 精緻にイギリス現地における史料調査を追加実施する必要があると判断し、1年間の事業延長を申請した。次年度使用額の使用計画は以下の通りである。史料調査のためのイギリス研修旅行のための旅費25万円、史料複写、図書(古書含む)購入のための物品費12万円、投稿時英文校正のためのその他22,457円。
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