本研究では、慣性センサーなどの身体や用具に装着可能なセンサーを用い、スポーツ活動中の人体や用具の計測とそのフィードバック手法について検討を行った。 令和元年度の研究においては、慣性センサーを用いた短距離走者の腰部姿勢推定に関する精度検証実験と競技者へのセンサーデータのフィードバック、慣性センサーを用いた床反力推定などを実施した。 一般に、慣性センサーから得られる大量の時系列データは理解することが難しいが、本研究で作成したセンサーデータ可視化システムを用いることで、データを直感的に観察できるようになった。この可視化システムは研究期間を通じてデータ分析の要となったことからも可視化の重要性が改めて示された。 人体の測定に関しては、短距離走者の腰部に装着したセンサーから腰の動きの変化を求め、それをモーションキャプチャーから得られたデータとの比較を行った。その結果、オイラー角の最小二乗誤差が最大で4°程度となり、また実際の競技場における走動作測定でも妥当な値が得られることが確認された。スポーツ用具の測定に関しては、ウインドサーフィンのボードや競技自転車のフレームといった計測では目的としたデータを得ることができたが、テニスラケット、剣道の竹刀といった瞬間的に大きな衝撃のある用具については衝撃後にデータの信頼性が極端に低下することが確認できた。 本研究全体を通じ、慣性センサーを用いたスポーツ活動のモニタリングはトレーニングや指導に有用であることが確認された。センサーデータは可視化することで、直感的な観察が可能であった。一方で、実際の利用に際してはデータの正当性の確認や精度検証が重要となることも明らかとなった。
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