研究課題/領域番号 |
17K01676
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
前田 明 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (40264543)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シャッターゴーグル / 直球を見るトレーニング / 野球のバントパフォーマンス |
研究実績の概要 |
視界が定期的に遮断されるシャッターゴーグルを用いて、野球の直球を見るトレーニングを行うことで打撃のバントパフォーマンスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 実験協力者はインフォームドコンセントが得られた大学野球選手19名で、シャッターゴーグルを用いて直球を見るトレーニング群(以下SG群)、シャッターゴーグルを用いないで直球を見るトレーニング群(以下NSG群)、直球を見るトレーニングを行わない群(CON群)の3群に区分した。その際、トレーニングを行う前のバントパフォーマンステスト結果に差が生じないように配慮した。本研究のトレーニングは、ドラム式全球種マシン(NB410, NISSIN SPM社製)から出される130km/hの直球を見るトレーニングとした。SG群、NSG群のトレーニング頻度は、先行研究にならい、15球×2セット、3日/週を5週間、計15回とした。直球を見る際、両群の実験協力者には、実打と同様のタイミングの取り方で、打者が普段ボールを見逃すような方法でボールを見るよう指示し、実打は行わなかった。SG群はトレーニング中、シャッターゴーグル(Visonap、ビジョナップ社製)を着用した。シャッターゴーグルの負荷は、周波数と遮断率によって決定される。周波数は10段階で、遮断率は3段階で自由に選択可能である。本研究では、先行研究を参考に、複数の組み合わせによる予備実験を行った。その結果、周波数30Hz、遮断率 50という負荷を選択し、トレーニングを行った。 その結果、SG群、NSG群のバントパフォーマンステストの成功率は、いずれも向上する傾向にあったが、有意な差は認められず、両群の変化率はいずれも約19%の増加で、両群に有意差がなかった。また内省報告では、両群ともトレーニングの有効性に対してポジティブな傾向があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学野球選手19名を対象としたトレーニング実験が終了した。トレーニングの結果は、SG群、NSG群において同様に約19%向上し、CON群に変化は認められなかった。このことから、大学野球選手は130km/hを見るトレーニングを行うことで、バントのパフォーマンスが向上する傾向にあることは明らかとなった。しかしながら、仮説としては、本研究のオリジナリティであるシャッターゴーグルを用いることで、SG群のトレーニングの変化はNSG群よりもバント成功率が高くなるのではないかと予想していた。すなわち本研究では、シャッターゴーグルを装着したことのトレーニングの特徴を捉えることができなかった。 本研究をこの段階で終了し、公開することも1つの選択肢ではあったが、トレーニング負荷の再考、また実験協力者である大学野球選手個別の変化とその特徴を考察することで、シャッターゴーグルに関する次の研究につながる可能性があるものと考えられた。 そこで、本研究課題を1年間延長し、特にシャッターゴーグルを用いたトレーニングを行った選手個々人の打撃の特徴とトレーニングによる変化を明らかにすることとした。
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今後の研究の推進方策 |
今回、本研究に実験協力者として参加してくれた大学野球選手における、シャッターゴーグルを用いた直球を見るトレーニングの変化の詳細を明らかにするために、これまで行った平均値による結果処理に加えて、SG群の対象者個別の変化を見る処理を加えることとした。そのために、実験で得られた個別データを改めて分析し直し、対象者それぞれの打撃パフォーマンスの特徴とトレーニングの変化に関する考察を加える。対象者の打撃パフォーマンスの特徴は、公式戦、オープン戦による打撃成績や、監督、コーチによる打撃パフォーマンスの評価などを用いて判断し、トレーニングの変化に影響があるか検討する。 本研究は、19名の大学野球選手が長期間トレーニングを行ってくれた貴重なデータである。上記の通り、仮説とは異なる結果となったが、上記の新たな分析を加えることで、今後のシャッターゴーグルを用いたトレーニングの負荷設定やトレーニングを行う上での留意点などを現場へのフィードバックとして考察し、次の研究につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
上記の通り、追加で研究結果の分析と考察を行う必要があると考えた。具体的には、本研究のトレーニングの実験協力者個別のデータを分析する際の分析補助者が必要になると考えられる。実際には、トレーニング評価としてのバントパフォーマンステスト、内省報告の変化を個別変化としてまとめるとともに、対象者の打撃パフォーマンスを試合結果から評価するデータ、また監督、コーチから得られた打撃パフォーマンスの評価をまとめる作業が必要である。 次年度の研究費の使用は、分析補助者への謝金を支払う分として使用する予定である。
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