研究課題/領域番号 |
17K01677
|
研究機関 | 札幌大学 |
研究代表者 |
金 誠 札幌大学, 地域共創学群, 教授 (40453245)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 植民地朝鮮 / 総力戦体制 / 身体管理 / 娯楽 |
研究実績の概要 |
平成30年度は総力戦体制期の植民地朝鮮にて実施された厚生運動・健民運動に着目して研究を進めた。とりわけ研究対象時期の農村部に焦点を当て、農村において振興された遊び、娯楽を『朝鮮社會事業』、『朝鮮』、『三千里』などの雑誌資料や『毎日新報』などの新聞資料を用いて調査し、都市部と農村部におけるソフトパワーを伴う身体管理政策について整理し、考察を行った。 研究成果は札幌大学総合論叢第46号に「植民地朝鮮における総力戦体制のなかの「娯楽」」として報告し、朝鮮半島における娯楽が植民地期の農村振興運動以来,管理される対象となり、総力戦体制の下での娯楽は統治と管理のなかで振興が図られていったことを明らかにした。さらにこうした「娯楽」の問題に着目して総力戦体制へと向かう朝鮮半島を見るとき、この時期のいわゆる「内鮮一体」を志向する政策とのギャップに気づかされ、神社参拝の強要,創氏改名,徴兵制の施行といった正に「内鮮一体」を具現化し,日本人への同化政策を強力に推し進めようとした政策と、「娯楽」を媒介とした統治の方法には若干の乖離があったと考察した。本研究で着目した「娯楽」による統治の方法は、朝鮮の文化や習俗あるいは朝鮮人の伝統的な生活を緻密に調査・分析したうえで農村部に暮らす多数の朝鮮人を管理しうる存在へと位置付けようとしたのであり、より人的資源として活用できる労働者の生産を促す政策としての機能を期待されたのだと結論付けた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度に当該研究課題を一つの論文にして成果の公表ができたが、他の科研費課題とのエフォートのバランスが若干曖昧になってしまい、本研究課題に費やす時間が減ってしまった。故に研究の進捗状況は当初の計画よりもやや遅れてしまっていると言わざるをえない。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、国民体力法と朝鮮体力令の比較研究に臨むことになるが、平成31年度(令和元年度)は日本において制定・施行された国民体力法について出来るだけ早い時期に先行研究の検討を進めたい。また史料の収集も同時に進行することで、比較研究にスムーズに移行できるように努力したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
他の科研費課題の研究調査に割く時間が多く、本研究課題の研究調査に費やす時間が少なくなってしまったため次年度使用額が生じてしまった。 今年度は本研究課題のための資料調査を国内外で予定すると同時に、いくつかの史料を購入することとしている。
|