ストレッチングは競技力向上はもとより,健康の保持増進,疾病の予防改善をねらって行われる各種トレーニング前にもトレーニング効果を高める目的で慣習的に実施されている.しかしながら,実際にはストレッチングの実施がトレーニング効果に及ぼす影響は明確ではない.そこで本研究は筋肥大および筋力向上を目的としたレジスタンストレーニングを対象にスタティックストレッチングおよびダイナミックストレッチングの実施がトレーニング効果に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
研究期間後半が新型コロナウイルス感染の流行に重なったことで計画していた実験を行うことができなかった.得られた研究成果としては,各種ストレッチングがレジスタンス運動のパフォーマンスに及ぼす影響ならびに各種ストレッチングがレジスタンストレーニングの筋肥大や筋力向上のトレーニング効果に及ぼす影響について検討した研究をレビューしたことが挙げられる.レジスタンス運動前のスタティックストレッチングがレジスタンス運動のパフォーマンスに及ぼす影響については,レジスタンス運動の主働筋群に対するスタティックストレッチングの実施時間が30秒以上で,かつ合計の伸張時間が比較的冗長な場合においてレジスタンス運動のパフォーマンスの低下を示した研究が散見された.また,レジスタンストレーニング前のスタティックストレッチングがトレーニング効果に及ぼす影響については,各トレーニング時の総挙上重量に負の影響を及ぼした研究で,スタティックストレッチングがトレーニング効果を減じることが示されていた.一方,レジスタンス運動前のダイナミックストレッチングがレジスタンス運動のパフォーマンスに及ぼす影響について検討した研究ならびにレジスタンストレーニング前のダイナミックストレッチングがトレーニング効果に及ぼす影響について検討した研究は限られており,明確な知見は確認できなかった.
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