本研究は『筋力トレーニングの伸張性収縮(ECC)局面における動作速度が筋肥大および最大筋力に及ぼす影響』を明らかにすることを目的とした。トレーニングの動作速度の違いが筋機能へ与える一過性の影響については、アームカールをCON局面3秒ECC局面1秒の条件とCON局面1秒ECC局面3秒の条件で50-70%1RM×3セット実施した前後の最大筋力、筋厚、主観的疲労度の変化を比較検討した。この研究成果については発表準備中である。動作速度の違いが長期的なトレーニング効果へ与える影響については、文献レビューを行った。その結果、若齢者の場合、1)短縮性収縮(CON)局面とECC局面両方を遅くする方法、2)CON局面のみを速くする方法、3)ECC局面のみを遅くする方法の3条件に分けられ、50%1RM程度のトレーニング強度の場合、1)の条件においては、各局面が1秒よりも3秒以上かけてトレーニングした方が筋肥大することが明らかとなった。一方、67%-85%1RM程度の強度を用いたトレーニングの場合、1)および2)ともに各局面において1-3秒程度の動作時間であれば筋肥大の程度に大きな違いがないことが示された。3)の条件においては、一致した見解が得られなかった。高齢者の場合、筋肥大を目的とした際には、1)と2)の条件にて行うトレーニングが有効であることが示された。一方、最大挙上重量の向上を目的とした場合、1)、2)および3)のいずれのトレーニング条件においても有意な差はみられなかったことから、高齢者のトレーニング経験等に応じて動作速度を選択することが適切であることが示唆された。最大パワーおよび日常生活動作遂行能力を向上させるためには、1)の条件でのトレーニングが有効であることが示された。
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