研究課題/領域番号 |
17K01682
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
渋谷 賢 杏林大学, 医学部, 講師 (30406996)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 自己身体認知 / 身体所有感 / 脳波 |
研究実績の概要 |
今年度は,32チャネルの脳波計測(EEG)により,ラバーハンド錯覚によって,錯覚性の身体所有感を生じた他者(モデル)の手の運動観察が被験者の感覚運動システムを活性化することを発見した.ラバーハンド錯覚とは,眼前の偽の手(ラバーハンド)と被験者本人の手を実験者がブラシで同時に撫でると,触覚がラバーハンドから生じるように感じ,さらにラバーハンドが自己の手のように感じる身体錯覚である.
本実験では,ビデオカメラとモニターを用いて,眼前のモデルの手と視覚的に遮断された被験者の手が同時(同期条件)もしくは交互(非同期条件)にブラシで撫でられた.この視触覚刺激中(錯覚誘発),モデルの手は時々大きく開いた.この手の動きを観察している際のμ波(8-13Hz)抑制(脳波)を感覚運動システム活性化の指標とした. 先行研究と同じく,被験者は,同期条件でのみモデルの手に対する錯覚性の身体所有感を報告した.運動観察中,被験者の手指に不随意な動きが生じた.この発生率は同期条件の方が非同期条件よりも高く,試行回数と伴に上昇した.運動観察に伴うμ波抑制の大きさは,非同期条件に比べて同期条件の方が強く,その持続時間も長かった.さらに,μ波抑制の大きさは身体所有感の強さと有意に相関した.
この結果は,義手や仮想手に対する身体所有感の客観的評価や行為観察を利用した運動回復のリハビリに寄与すると考える.本成果は,国際誌(Neuropsychologia)に3月掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験システムの開発および脳波計測が上手く出来,データも蓄積できているため
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今後の研究の推進方策 |
今後は脳波の事象関連脱同期を利用し,今回の身体化したラバーハンドの動きの観察中の感覚運動活性を更に検討する予定である.具体的にはラバーハンド誘発期に遅延視覚フィードバックを入れ,その効果を調べる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費・人件費が当初の予定よりかからなかったため.いずれも次年度の旅費・人件費として使用する予定である.
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