研究実績の概要 |
目的;水平方向動体視力(Dynamic Visual Acuity; DVA)と眼球運動の間には密接な関連がある。現在までにDVA測定の際の視標の速度、視標の移動方向による眼球運動の変化について実験により明らかにしてきた。これを更に発展させ、年齢、性別、競技種目による差異を明らかにする。 対象、方法;健康成人のみを対象して測定した。DVAと同時に眼球運動を計測した。DVAの能力は、被験者の眼前を横切るランドルト環の切れ目の方向の回答正解率(%)で評価した。眼球運動の評価は、視標出現からの眼球運動開始時間、眼球と視標位置の差(エラー)、saccade最大速度とした。視標速度は200,300,400,500, 600 (deg/sec) の5条件とした。視標の出現方向を左から右、右から左の2パターンとし、視標の回転方向による眼球運動の変化についても検討した。 結果;視標速度の上昇に伴いDVAの能力は有意に低下した(p<0.001; One-way repeated measures ANOVA)。視標速度の変化における眼球運動の評価においては、視標速度の上昇に伴い、眼球運動の開始時間の短縮(p<0.05)、エラーの増加(p<0.001)、最大速度の増加(p<0.001)が認められた。視標速度の上昇に伴いエラーは急激に増加した。また、 眼球運動の開始時間は300deg/sec近辺で頭打ちとなった。視標の回転方向の変化による眼球運動の変化も認められた。 結論;視標速度の上昇に伴うDVAの能力の低下、眼球運動の変化を確認することができた。視標の回転方向に伴う眼球運動の変化も確認できた。眼球運動がDVA測定の評価に有用であることが明らかとなったので、今後は年齢、性別、競技種目別の比較を行い、眼球運動とDVAがそれら各項目でどのように異なるのかを調べ、データベース化する。
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