研究課題/領域番号 |
17K01685
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
本間 俊行 大東文化大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (90392703)
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研究分担者 |
只隈 伸也 大東文化大学, スポーツ健康科学部, 教授 (30407655)
琉子 友男 大東文化大学, スポーツ健康科学部, 教授 (70111440)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 低酸素トレーニング / 陸上競技長距離 / 血中乳酸濃度 / 換気量 / 酸素摂取量 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、陸上競技長距離選手における低酸素トレーニングの効果を評価するための指標を確立することと、効果的な低酸素トレーニング法を確立することを目的として研究を実施した。 被験者は、大学生男子陸上競技長距離選手であった。トレーニング効果の評価指標の確立を目的として以下の2種のテストを行った。一つ目として、トレッドミルを用いた速度および傾斜を漸増させる方法で呼気ガス分析による最大酸素摂取量の測定を行った。二つ目として、陸上競技場トラックにて800m走を6~8回、1回ごとに徐々に走速度を高めるプロトコルで、各800m走行直後の血中乳酸濃度を測定し、10kmのランニングパフォーマンスとの関連を調べた。その結果、血中乳酸濃度4mM相当の走速度と10km走行時の平均走速度との間には、r=0.96, p<0.001の相関がみられた。この結果から陸上競技場トラックでの800m走を複数回、多段階の速度で実施し、血中乳酸濃度4mM相当の速度を求めることで、10kmのランニングパフォーマンスがほぼ予想できることが示唆された。本研究で用いた800m走を複数回実施する方法であれば、レースやタイムトライアルのように全力を出すことなくランニングパフォーマンスを推定できるため、被験者の負担も比較的軽い上、通常のランニングトレーニングにも支障をきたすことなく、トレーニングの効果を評価できる有用な方法であるといえる。 トレーニング方法の確立を目的とした低酸素環境での自転車エルゴメータを用いた運動では、陸上でのランニングのように下肢の関節や筋肉に対するダメージはは少なく、常酸素環境での運動時と比較して有意に高い換気量や血中乳酸濃度が得られるため、通常の陸上でのランニングでは与えることができないトレーニング刺激を与えられることを確認できた。その結果、本研究でのトレーニングプロトコルも確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
陸上競技場トラックでの800m走で評価した血中乳酸濃度4mM相当の速度は、10kmのランニングパフォーマンスをほぼ予測できる指標となることがわかった。そのため、陸上競技長距離選手を対象とした低酸素トレーニングの効果を評価する指標を確立することができた。また、常酸素環境でのランニングトレーニングは従来通り実施しつつ、低酸素環境特有の生理応答を活かしたトレーニングを加える方法も確立することができた。以上のように、平成30年度以降に実施するトレーニング研究の土台となる研究を行うことができたことが「おおむね順調に進展している」といえる理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度に確立したトレーニング効果の評価法とトレーニング法を用いて、平成30年度と平成31年度ではトレーニング研究を行う。 陸上競技長距離の専門的トレーニングを行っている男子大学生16名を被験者とする。16名の被験者を8名ずつの2群に分け、一方を低酸素環境でトレーニングを行う群、もう一方を常酸素環境でトレーニングを行う群とする。トレーニングは、自転車エルゴメータを用いた1回あたり30分間の運動を週3回、4週間実施する。トレーニング効果の評価として、最大酸素摂取量の測定および陸上競技場トラックでの800m走の漸増速度テストにおける血中乳酸濃度の測定をトレーニング開始前、トレーニング2週間終了後、トレーニング期間終了後に実施し、血中乳酸濃度4mM相当速度を求める。 本研究の成果を学会で発表し意見交換の後、論文として発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の研究に参加した被験者の協力により謝金が不要となった。また、当初、平成29年度の学会発表における旅費の支出を見込んでいたが、予定を変更して平成30年度における学会発表および論文発表を充実させるためにその分の費用を次年度に使用することとした。以上が次年度使用額が生じた理由である。 平成30年度は、被験者謝金、消耗品購入、学会発表(参加費および旅費)、論文英文校正、論文発表に助成金を使用する。
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