研究課題/領域番号 |
17K01688
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
村上 貴聡 東京理科大学, 理学部, 准教授 (30363344)
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研究分担者 |
立谷 泰久 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学部, 研究員 (10392705)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 審判員 / ストレッサー / コーピング / メンタルヘルス |
研究実績の概要 |
本研究はスポーツ審判員を対象とした心理的ストレスに注目し,審判員のストレッサー並びにストレス反応を明らかにする.そして,審判員のストレスの実態とその効果的対処を理論的,実践的に検討することを通して,審判員を対象としたストレスマネジメントプログラムの開発とその評価を行うことを目的に推進している.具体的には,審判員のストレスに関わる国内外の文献的研究を行い(研究1),面接調査を実施することにより審判員のストレッサー及びコーピングの実態を明らかにする(研究2).次に,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発し,その関連性を検討することにより審判員の心理的ストレスモデルを構築する(研究3).最後に,審判員に対するストレスマネジメントプログラムを考案し,その効果を検証する(研究4). 2017年度は研究1及び2を実施した.調査対象者の収集においては,複数の競技団体と十分に連携して研究を実施することができた.実施にあたっては,国際審判員の資格を有するテニス審判員5名,ハンドボール審判員3名,サッカー審判員2名を対象として,「審判員のストレッサーとコーピング」について半構造化面接を行った.その結果,審判員のストレッサーとして,ジャッジへの不安,選手や観客からの抗議,時間的負担,金銭的負担,パフォーマンスの評価,対人関係などの内容が報告された.また,報告されたストレッサーに対して,どのようなストレスコーピングを活用しているかを分析した結果,認知的方略,メンタルスキル,ソーシャルサポート,回避などの内容が示された.さらに,サッカーの1級審判員52名を対象にして,メンタルヘルスの調査を行った結果,心理的ストレスや身体的ストレスは低いものの,社会的ストレスがやや高い傾向がみられた.2018年度はこの成果を踏まえ,審判員のストレッサー並びにコーピングを測定する評価尺度を開発する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の競技団体における国際審判員を対象とするため,面接調査の日程調整に時間を要すると思われたが,対象者にはスムーズに承諾を得ることができた.そのため,面接調査(半構造化面接)も終了し,研究分担者ならびに連携研究者とも得られたデータに関して内容分析を行うことにより,審判活動におけるストレッサーやコーピングストラテジーの様相を明らかにすることができ,研究は順調に進展している.また,平成30年度に実施する予定であった審判員のメンタルヘルスに関する調査も実施することができた.これらの内容は,日本スポーツ心理学会や日本テニス学会,ヨーロッパスポーツ科学会議(ECSS)で発表をすることができた.さらに,トップレフェリーのコーピングに関する研究結果は2018年に開催されるヨーロッパスポーツ科学会議や国際ラケットスポーツ科学会議で発表予定である.以上のことから現在までの達成度は,「おおむね順調に進展している」と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の調査で得られた面接調査の結果から,審判員のストレッサー並びにコーピングストラテジーに関する項目を選定し,研究分担者や連携研究者と議論することにより,審判員のストレスモデルを構築するための測定尺度を作成する.具体的には,複数の競技団体(ハンドボール,サッカー,ラグビー,テニス,野球など)における公認審判員約300名を対象に横断的調査を行い,審判員のストレッサー,コーピングストラテジーおよびストレス反応の内容を抽出し,測定尺度を開発するとともに,尺度の信頼性および妥当性を検証する.調査依頼,調査協力者の募集などは十分な期間を設定しておく.また,調査項目の内容の妥当性については,国内外で活躍する国際審判員複数名とスポーツ心理学を専門とする研究者,ストレスマネジメントを専門とする研究者による2段階の確認作業を経て行う. 続いて,開発された尺度を用いて,審判員特有のストレッサーがストレス反応に与える影響についても検討する.同時にストレスの認知的評価,コーピングストラテジーについての調査を行い,審判員の心理的ストレスモデルを構築し,諸変数間の関連性を定量的に解析・検証する.モデルの構築に当たっては,研究の質を高めるためにスポーツ心理学ならびにストレスマネジメントを専門とする複数の研究者で検討する.研究の成果や公表については,日本スポーツ心理学会,ヨーロッパスポーツ科学会議,国際ラケットスポーツ科学会議などの学術集会に参加し,結果の解釈に関する情報収集を行うとともに,研究発表を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に残額(207,907円)が生じてしまったが,本調査における量的なデータ分析に必要なソフトの購入(SPSS)ができなかったことが大きな要因であった. 平成30年度は,本調査を実施するため,調査用紙の印刷代,データ入力にかかる費用,調査協力者への謝金,そしてデータ分析用のソフト(SPSS)購入などが必要となる.また,得られた結果についてほかの研究者とのディスカッションを行う必要があるので,いくつかの学会において発表を予定している.アイルランド・ダブリンにおいて7月に開催されるヨーロッパスポーツ科学会議(ECSS)では国際審判員のストレスに関するテーマで発表申し込みを行い,すでにアクセプトされている.
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