昨今、女性アスリートは、日々の激しいトレーニングによって利用可能エネルギー不足、無月経、骨粗鬆症を引き起こすことが報告されており、これらは女性アスリートの三主徴(以下三主徴)と定義されている。アメリカスポーツ医学会では、女性アスリートの骨密度低下のリスクファクターとして低BMI、希発月経や無月経などの月経異常、遅発初経、疲労骨折歴、摂食障害歴を挙げており、これらの環境に曝された場合に骨疾患のリスクが高くなることが示されている。一方で、骨密度は遺伝因子の影響を受けることが示されており、これまでに遺伝子を網羅的に解析するゲノムワイド関連解析によって66もの一塩基多型(SNPs)が骨密度に影響することが明らかにされているが、女性アスリートの骨疾患に関連する遺伝因子に着目した検討がなされておらず、環境因子と遺伝因子のどちらの影響をより強く受けるのか、また遺伝的な違いが環境因子の感受性にどのように影響を及ぼすのか解明されていないことから、女性アスリートの骨疾患リスクの定量化をの可能性に着目した。 1.女性アスリートにおける月経周期の異常(長期化)は、骨量の維持に悪影響を与える可能性が考えられ、特にビタミンD受容体遺伝子 Bsm1多型Bb型の発現を有する女性アスリートの場合においては、月経周期異常が腰椎骨密度低下と関連する可能性を示唆した。 2.競技型によって低骨密度リスクファクターの骨密度への影響が異なること及び、ビタミンD受容体遺伝子ApaⅠ多型aa型の発現を有する女性アスリートは、AA+Aa型と比較して、低骨密度のリスクファクターの感受性がより高い可能性を示唆した。しかし、サンプル数、栄養評価や競技種目等を含め、さらなる環境因子と骨代謝関連の複数遺伝子の組み合わせとの関連を検討(縦断的検討を含む)する必要があり、今後の課題として挙げられる。
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