これまで,競泳競技に関する研究を系統的に推進する中で,ビデオ映像に実座標や時間経過を表示する拡張現実(AR)ビデオの開発を続けてきた。アーティスティック・スイミング(AS),飛込,水球にとってもやはり,ARビデオによる科学サポートは,選手や指導者等の多様な活躍の支援やジュニア期からトップレベルに至る戦略的支援強化のために有用であると考えられる。ARビデオによる科学サポート事例は競泳以外には見られないため,競泳サポートの知的蓄積を共有・活用することにより,新たな価値の創造が期待される。したがって, ARビデオによる飛込,ASおよび水球の科学サポート・システムを開発することを目的とした。 飛込競技は日本選手権2017とFINA World Diving Series 2018の高飛込,AS競技は全国レベルの13-15歳ソロ大会と外国選手を含むパラ大会のフリールーティン,水球競技は日本選手権2019を対象とした。飛込とASでは独自開発のビデオ2次元DLT分析・情報提示ソフトNotePlayer2をカスタマイズして分析に用いた。また,水球では姿勢推定・物体検出ソフトを用い,比較検討した。 飛込競技では,1カメラで踏切位置の違う対象の矢状面分析ができるTwo points Perspective 2D-DLT法を開発し,空中動作の大転子点変位を放物要素と回転要素を分離抽出し,演技比較をした。AS競技では,水面上の移動軌跡を定量化および可視化した。上半身の演技時間の短さは実施点に有意な負の相関が見られたことより,上半身のより爆発的なダイナミックな演技が必要であることが示唆された。水球競技では,PoseNetによる姿勢推定は不調に終わったが,Keras-YOLO3による物体検出はほぼ全体が検出できた。今後,様々な水泳関連動作の学習モデルを作成することを課題とする。
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