本研究は、EUにおけるスポーツの統合・インクルージョン政策を、メール調査およびヒアリング調査をSWOT分析により検証する。2022年度は研究テーマの統合・インクルージョン政策のヒアリング調査をフィンランド、ドイツ、およびベルギーのEU本部において実施した。特に、EUが何故、スポーツのインクルージョン政策を導入し、欧州委員会において成果をあげたかを解明した。 欧州委員会は、「スポーツはヨーロッパのアイデンティティの不可欠な部分で、人々、地域社会、経済のためのスポーツの役割を促進する」と明言している。これは、2009年12月のリスボン条約において、EUの権限を条約の中に位置づけたことによる。EUは2007年にスポーツ白書を刊行し、スポーツを社会的、文化的に重要なものと位置づけてきた。インクルージョン(受容)は、ヨーロッパにおけるスポーツ政策の最重要理念のひとつである。欧州委員会は、現在、「欧州スポーツ週間」、「EUスポーツフォーラム」、「#BeInclusiveEUスポーツ賞」、「HealthyLifestyle4Allイニシアティブ」などを展開している。また生涯学習事業として”Erasmus+”事業の中にスポーツ事業が導入された。 研究協力者との研究結果のSWOT分析により、EUにおける国内スポーツ統括団体の統合に関する分類を行った。NOC・NPC統合/分離をタテ軸、NOC・NSA統合/分離をヨコ軸に分類した結果、①完全統合型(オランダ・ノルウェー)、②オリパラ分離・エリート/SFA統合型(フィンランド・ドイツなど17カ国)、③伝統的分離型(ベルギー・ギリシャなど9カ国)の3タイプに分かれた。また、SWOT分析の結果、オリパラ分離型の強みと弱み、エリートSFA統合型の強みと弱みが明らかになった。研究成果は、日本生涯スポーツ学会および海外の関連学会において発表した。
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