研究課題/領域番号 |
17K01722
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
瀬戸 邦弘 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 准教授 (40434344)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 応援団 / 近代日本 / 学校文化 / 伝統 / 日本人論 / 体育会文化 / スポーツ・身体文化 |
研究実績の概要 |
本研究では大学・高校の応援団において参与観察を実施し、彼らが共有する独自の価値体系(身体観や世界観)を、調査により得られた「言説ならびに画像、映像の分析」から明らかにする事を目的とし、実践者に共有・継承される「暗黙知」としての身体・身体技法や、そこから紡ぎ出される独自の世界観を可視化する事を目指している。たとえば、身体観の抽出に関しては、実践者に共有される「約束事やハビトゥス(社会的に習慣化された身体技法)」を理解するために(1)エティック(研究者の視点)、(2)イーミック(実践者の視点)の二つの視点を意識し、客観的に「応援団の身体」の可視化が叶うように研究を進めている。また、「応援団の世界観」に関しては歴史的資料や彼らの言説分析を精緻に進めている。本年度は北海道大学、小樽商科大学、上智大学、岩手県立福岡高校、岩手県立盛岡第一高校など日本でも有数の伝統ある大学、高校の応援団を訪問し多くの知見を得ることができた。参与観察は平素の練習だけでなく、夏期合宿やライバル校との対面式など多様な場面で実施され、その際には多くのOBへのインタヴューも実施している。あわせて、これらの伝統的応援団内や各校に残る団誌や学内雑誌、地域の新聞等メディア報道資料の収集にも力を傾注し、学校や地域に残る資料の分析にも余念はない。 本研究調査の途中経過として、今年度は日本体育学会(徳島大学)、日本スポーツ人類学会(早稲田大学)の学会大会にて口頭研究発表を行っている。また、静岡県高等学校応援団フェスティバル(静岡市)や大学応援団フェスタ(東京都)など応援団団体からも招聘され、本研究課題である応援団文化に関してシンポジウムへ参加し、講演する機会を得ている。あわせて、近代的身体の基礎を作った「近世の身体観」の研究にも余念はなく、日本スポーツ人類学会や立命館大学の紀要等でこれらに関する論考を発表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、参与観察もスムーズに進み、また国立民族学博物館や各地域の大学、高校応援団やそのOB達、高等学校の応援団連盟等ともうまく連携をはかる事に成功し、当初の予定通りに調査研究が展開している。 あわせて、たとえば、小樽商科大学・北海道大学応援団研究では、応援団が所属する小樽商科大学や小樽市立図書館などとの協力の上「小樽商科大学・北海道大学応援団」に関する展示会(資料や文献を展示)の実施案も提案されており、本研究成果の社会への発信や社会への還元機会創出の新たな可能性を得ている。また、あわせて今年度は、すでに静岡県高等学校応援団フェスティバル(静岡市)や大学応援団フェスタ(東京都)など高校、大学の応援団組織からも、応援団研究の専門家として招聘され、シンポジウム・講演の機会を得る事になった。これら機会を通して課題成果に関して「社会への発信・還元」の貴重な機会を得る事になり、当初の目論見以上の発信・還元が叶っている。もちろん、これまで通り、学術団体における研究発表や学会誌への論考の投稿・掲載、さらにはそれら論考(例:立命館大学の論考)などをWeb媒体へ掲載し、広く本研究の成果が社会へ拡散していくように努力する事は当然の事であるが、展示会や講演会など「社会への直接的な研究成果を発信する機会」も大切にしていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後はこれまでの研究体制を維持・強化し、①まずは各地域において応援団活動の参与観察(聞き取り調査、映像・画像の収集)を継続展開し、その後、調査で得られたデータのアーカイブ化を進めていく。そして、完成年度には必要と思われる補足調査を実施し、総合的な考察を実施し、その結果は口頭研究発表や論考、WEB 上にて公開する事になる。 また、参与観察に際しては、たとえば各地域の新聞等のメディア報道資料の収集にも力を傾注し「地域の固有のまなざし」ともいうべき、地方(当該地域)の視点検討も重要な課題として情報収集を進める。また、学術的先行研究の検討にも力を注ぐ予定であり、学術雑誌、および単行本として刊行されている応援団関係、近代日本文化、近世/近代の身体論等の収集、検討を行い「日本文化(の動態として)応援団」の分析を注意深く進める。あわせて、専門家として招聘される機会があればシンポジウム、講演会、展示会等にも積極的に参画し、研究課題成果の「社会への発信・還元」を積極的に行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度に予定していたインタヴューがインフォーマントへの都合によって延期になってしまった。そのために、あらためて先方と相談し計画を立てたところ、新たなアポイントが平成31年度(令和元年度)となり一部予算を次年度に繰り越すことになったしまった。インタヴュー調査は相手のある事であり、場合によっては今回のように、再度の予定の調整を求められる事が起きるが、このような場合、できる限り臨機応変に対応し、当初の計画に適うようにしっかりと調査・研究を実施していきたいと考えている。
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