コロナウィルス感染拡大の影響によって、本課題も一年間研究期間が延長される形になったが、2020年度も2019年度後半と同様に、社会全体が流動性を欠き停滞し、参与観察を旨とする本研究においても直接的に影響を受ける事になった。一方で、研究調査に出られない時間を利用して、これまでの研究調査で得た知見の分析とその考察を精力的に行い、充実した一年だったとも言える。たとえば、申請者は本課題の成果の一部として岩手県立盛岡第一高校の応援団文化を対象にした論考を執筆し、2020年12月に発行された『応援の人類学』(青弓社)に掲載されている。本稿は、現在コロナ禍で中断している当高応援団文化のモノグラフとも言え、後世に貴重なデータを遺す事が出来たとも考えている。また、本課題に注目した読売新聞社からの取材を受けて、『読売新聞(夕刊)2020年5月19日』に応援団文化の歴史と成り立ちに関するインタヴュー記事が掲載されている。あわせて、全国的な部活動の自粛期間に大学応援団フェスタ事務局からの依頼を受けて、対外活動自粛期間を利用した「応援団文化のアーカイヴ事業」を提案し、その推進に協力している。本アーカイヴ事業は、本課題の焦眉のポイントでもある「無形文化財」としての応援団文化の動きの保存、継承に関する研究ポイントとも重なるものであり、フェスタ事務局の協力もあり、貴重な研究調査を行う事が出来た。そして、それは20年度から採択された課題「応援団文化と構築される近代日本の身体観」(基盤(C) 20K11420 )の研究遂行にも大きなヒントを与える事になった。
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