研究課題/領域番号 |
17K01728
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
橘 香織 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (80453025)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 障がい者スポーツ / 車いすバスケットボール / 競技特性 / 運動率 / 二次元DLT法 |
研究実績の概要 |
本研究は、車椅子バスケットボール女子日本代表のゲーム中の移動距離と移動速度、加速度を客観的数値指標として定量的分析を行い、運動強度の特性を明らかにし、競技力向上のために必要なトレーニング方策を立てるための知見を得ることを目的としている。 平成29年度は,車いすバスケットボール女子日本代表の国際試合映像をデジタルビデオカメラを用いて撮影し,二次元DLT法を用いてプレー中の選手の位置情報を取得し,試合中の移動距離および移動速度を算出した。移動速度のデータから試合中の運動率を算出した。運動率は,試合中の時間からクォーター間の休憩及びタイムアウト,フリースローの時間を除き,ゲームクロックが動いている時間(以下,ライブ)と止まっている時間(以下,デッド)に分けて算出した。 また,今後のゲーム分析においては,各選手のチーム内での役割がプレー中の移動距離や移動速度に影響してくることが予想されることから,2016年に開催されたリオパラリンピック車いすバスケットボール競技のスタッツを元に,選手のクラス別に試合中のプレー内容の検討を進めた。また,選手の健康状態把握のためのメディカルチェックも実施した。 映像分析の結果から,一試合の走行距離は約5200m,平均移動速度は1.73m/秒で,最大移動速度の平均値は5.41m/秒であった。また,ライブ時の運動率は,低速域(1.5m/秒未満)が46%,中速域(1.5m/秒以上3.5m/秒未満)が44%,高速域(3.5m/秒以上)が10%,デッド時が低速域(1.5m/秒未満),中速域(1.5m/秒以上3.5m/秒未満),高速域(3.5m/秒以上)低速域60%,中速域37%,高速域3%であった。運動率はチームによって有意差は無かったことから,チーム戦略によらず概ねこの速度分布で競技が行われており,間欠的なスプリントを繰り返す運動特性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機器の準備,および試合映像の撮影や解析は順調に進んでいる。一試合の映像分析にかなりの時間がかかるが,デジタイズを正確に行うことが重要であるため,こちらも想定の範囲内である。2年目以降は加速度センサーを使っての移動距離の測定に進む予定であるが,車いすへの取り付け方法やデータの取得方法についての検討を進めているところである。 スタッツ分析,メディカルチェックの結果の分析も協力者とともに進めており,車いすバスケットボール女子の競技力向上のための有用なデータを,合宿等で順次チームにフィードバックを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
二次元DLT法による移動距離の算出は,信頼性が高い手法ではあるものの,デジタイズに非常に多くの時間を要する点がデメリットである。二年目以降は,当初の計画にのっとって,加速度センサーによる移動距離の算出および誤差の評価を行い,手法の有用性,信頼性について検討を進めていく予定である。 また,実際の試合における運動率のデータが明らかとなったことから,それを元にした代謝系トレーニングモデルについて開発を進め,その効果について検討していく。 さらに,スタッツ分析および試合内容の分析から,移動距離や移動速度に加えてプレーの内容とその時にどのような動作が含まれているのか,についての検討を深め,競技力向上のために必要なトレーニング構成を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は主にデータ取得及び解析に必要な機器の購入に使用した。 助成金の残額および平成30年度請求予定の助成金は,試合映像を2次元DLT法によって分析するためのデジタイズ作業の協力者への謝金,及びデータ取得のための出張旅費,及び学会発表の際の旅費等に使用する予定である。
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