研究課題/領域番号 |
17K01728
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研究機関 | 茨城県立医療大学 |
研究代表者 |
橘 香織 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (80453025)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 障がい者スポーツ / 車いすバスケットボール / 競技特性 / 運動率 / 二次元DLT法 |
研究実績の概要 |
本研究は、車椅子バスケットボール女子日本代表のゲーム中の移動距離と移動速度、加速度を客観的数値指標として定量的分析を行い、運動強度の特性を明らかにし、競技力向上のために必要なトレーニング方策を立てるための知見を得ることを目的としている。 2019年度は前年度に引き続き,車いすバスケットボール女子日本代表の国際試合の撮影および映像分析を進めた。また、2018年8月にドイツにて開催された世界選手権大会において撮影した動画を元に,東京2020に参加する国の試合データを分析した。さらに,2018年世界選手権ドイツハンブルグ大会の分析動画を元に,車いすバスケットボールとバスケットボール(健常者が立って行うバスケットボール)でのシュートエリアとスペーシングの取り方について検討したところ、車いすという物体の存在によりシュートエリアの特徴が両競技間でかなり異なることがわかり、結果をまとめて学会発表を行った。 また、これまでの分析結果から明らかとなった,間欠的な短い休息を挟んだスプリントが中心となる競技特性を考慮して,健常者プレーヤー及び地域で活動するクラブチームでもインターバル走を中心としたトレーニングメニューを中心としたチェアスキルメニューを継続して行ったところ,20m走や5分間走、Yo-Yo間欠性回復力テストの平均スコアが伸びるという効果が見られた。 女子日本代表選手のフィジカル面での評価のために実施してきたスキルテストについて、選手のクラス(身体機能障害の重症度を反映している)がテストの結果にどの程度影響するのかを分析し、論文として発表した。また女子日本代表を対象に毎年実施しているメディカルチェックの分析を進めた結果、肩関節痛の自己評価指標が画像診断よりも早期に上腕二頭筋長頭腱炎の発生を予測し得ることがわかり、結果をまとめて学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は世界選手権において多くの試合を撮影したため解析対象の試合が増え,映像分析にかなり時間がかかっていること,また、メディカルチェックのデータやスキルテストのデータの解析および発表準備に時間を要したため、当初の計画より結果の抽出が少し遅れている。一試合の映像分析にかなりの時間がかかるが,デジタイズを正確に行うことが重要であるため,想定の範囲内ではあるが,最終年度に向けてより集中的に解析を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の今年は,引き続き映像分析を進め,日本と海外の強豪国との運動率や移動距離について比較検討を行っていく予定である。また,検討していた加速度センサーを使っての移動距離の測定については,スポーツバイオメカニクスの専門家の方からノイズと測定誤差がかなり大きくなることから現実的でないとのアドバイスを得たため,加速度のデータから移動距離を推定するのではなく、漕ぎ始めやブレーキの動作における加速減速の大きさを評価し、トレーニング負荷強度の推定やトレーニング効果の検討を行っていく。 また、移動距離のみのデータではなく、シュートやパスなどのバスケットボール特有の動作イベントが発生した地点を記録することでシュート距離やパスの距離を推定することができるようになる。試合のスタッツ分析を依頼しているスポーツアナリストと協力して、走力以外の競技特異的な動作パフォーマンスの分析を進めていく予定である。 最終年度となるため、これまでの研究成果をまとめ学会発表や論文の形で発表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度はデータ分析に対する報償費執行が少なく、残額が生じた。 次年度は現在分析が完了していないデータ分析を強力に進めるため、複数人に作業従事を依頼する予定であり、これに対する報償費執行を見込んでいる。
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