本研究は、車いすバスケットボールのゲーム中の移動距離と移動速度、加速度を客観的数値指標として定量的分析を行い、運動強度の特性を明らかにし、競技力向上のために必要なトレーニング方策を立てるための知見を得ることを目的としている。 2021年度は前年度に引き続き,車いすバスケットボールの国際試合の撮影および映像分析を進めたが、前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きく、東京パラリンピックも無観客開催となってしまいデータサンプリングが困難であった。そのため、2016年リオパラリンピックと2018年世界選手権ドイツハンブルグ大会の動画を元に,バスケットボールと車いすバスケットボールのオフェンススキルの特性の違いについて分析を進めた。 また女子日本代表を対象に毎年実施しているメディカルチェックの分析を進めた結果、発症頻度が高いTFCC損傷については、自覚所見や整形外科的スペシャルテストでの陽性の結果が出ていないにもかかわらずMRI検査にて骨関節に所見が出ていることが発見されるなど、メディカルチェックの活用の重要性及び予防的処置の重要性が示唆された。ただMRI検査は禁忌事項も多く時間もかかるため、超音波エコーを用いて手関節不安定性の評価を開発し、手関節傷害の発生予防に役立てられないか検討を進めた。 東京パラリンピック後も継続して東京・北区のナショナルトレーニングセンターで強化活動が行われており、アリーナに設置されているローカルポジショニングシステムを活用したプレー中の位置情報、走行距離、速度などの計測を試みたが、地震等の影響によりキャリブレーションの再調整が必要となるなど、実用化にはまだ至っていない。
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