研究実績の概要 |
日本とドイツは、少子高齢化という共通の課題を抱えているが、外国人の受け入れについてはその考え方と政策において違いが見られる。ドイツ連邦統計庁の国勢調査によると、2015年現在、「移民的背景を持つ者」は、約1,710万人で、ドイツ総人口の21%を占めている。2015年以降、ヨーロッパにおいて反移民・反難民の動きが活発化し、外国人受け入れに対する危惧や懸念が高まっている。こうした状況にもかかわらず、ドイツでは今も移民や難民を積極的に受け入れている。こうした国の政策を背景として、他国からの移民を社会に統合するという点でスポーツクラブの果たす役割が益々重要になっている。 社会的統合とは、移民を背景とする人々が等しい権利をもって社会生活に参加することができ、同時に、スポーツ世界に参加し、参与する場合にも、全ての人々が法治国家の民主主義的な基本的立場に立って、文化的な多様性に敬意を払い、その維持に協力することである。 研究期間中、7つのスポーツクラブ(移民によって創立され、もしくは主として移民によって組織され、会員の大半が移民であるようなスポーツクラブも含む)を訪問 し、理事の方々と地域スポーツクラブの果たす社会的統合の役割と機能について様々な意見交換を行った。その結果、スポーツクラブにおけるスポーツ活動の場が、移民同士または移民と地元住民の会話の場となったり、犯罪等の地域が抱える問題を緩和するきっかけとなったり、相互の文化に対する理解を深める機会や母国から離れて暮らす移民の帰属意識を回帰させる機会になるなど、さまざまな側面において移民同士や移民と地元住民の間に効果をもたらしているという興味 深いコメントを聞き出すことができた。
|