研究課題/領域番号 |
17K01734
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
鯉川 なつえ 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 先任准教授 (70338424)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 女性アスリート / Female Athlete Triad / LEP / IGF-1 |
研究実績の概要 |
本年度は、LEP服用のない健康な女性アスリート6名(正常群、19.33±1.21歳)、月経前症候群および過多月経を有し、医師よりLEPを処方された健康な女性アスリート6名(正常LEP群、19.50±1.22歳)およびLEPを服用していないFATを呈する女性アスリート3名(FAT群、18.67±0.58歳)計15名を対象として、身体組成(BODBOD)、血液検査、骨密度(DEXA)、運動量(走行距離)を調査した。正常LEP群の服用前(事前)と服用6ヶ月後(事後)のタイミングの2ポイントで各群と比較検討を行なった。 腰椎骨密度は、正常群の事前は0.9264±0.0930、事後は0.9647±0.1106、正常LEP群の服用前は0.9796±0.0892、服用後は1.0078±0.0952、FAT群の事前は0.9073±0.0680、事後は0.9043±0.0647であり、事前事後および群間に差はなかった。貧血を示すフェリチンは、正常群の事前は31.73±31.81 ng/mL、事後は35.08±14.83ng/mL、正常LEP群の服用前は35.48±20.89ng/mL、服用後は71.00±41.02ng/mL、FAT群の事前は83.70±70.07ng/mL、事後は100.57±56.63ng/mLであり、正常LEP群はLEP服用前に比べLEP服用後に有意(p<0.03)に高値を示した。また、IGF-1は、正常群の事前は269.33±52.58pg/ml、事後は242.83±58.22pg/ml、正常LEP群の服用前は229.50±51.67pg/ml、服用後は184.33±24.52pg/ml、FAT群の事前は169.00±17.09pg/ml、事後は184.67±13.65pg/mlであり、各群とも事前と事後に差はなかったが、FAT群は他の群に比較して低値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、LEP服用により改善がみられるとされているPMSおよび過多月経を呈する健康な女性アスリートのLEP服用による変化を確認することが主な目的であった。その結果、腰椎骨密度は事前事後および群間に差はなく、LEPが骨密度に影響を及ぼさないことが明らかとなった。貧血項目に関しては、正常LEP群は服用前後でフェリチンが有意に高値を示した。女性アスリートは、月経血による貧血に注意を払わなければならないといわれている。このことからも、LEP服用により過多月経に起因する月経血が減少したことで、貧血予防につながった可能性が示唆された。一方で、LEPの服用によりIGF-1が低値になることからアメリカスポーツ医学会はLEPの服用に対してネガティブな見解をしてしている。しかし、米国人と日本人とでは基本的な血液正常に差がある可能性があることから、LEPへの反応にも差があると考えられる。また、先行文献の多くは、女性アスリートではなく一般人女性多いこと、またそもそもIGF-1が低値になることによるデメリットや、どのくらい低値になるとよくないのか等、まだ解明されていないことが多数ある。そのような状況の中、本研究データでは正常LEP群はLEPの服用前後においてIGF-1の有意な減少は確認されなかった。これは、先行研究を覆すものであり、日本人女性アスリート特有の現象なのかも含め、さらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、昨年度検討した身体組成測定(BODBOD)、血液検査、骨密度測定(DEXA)、運動量(走行距離)のデータを継続的に収集する予定である。さらに、血液項目にレプチンを追加していく。レプチンは、脂肪細胞が分泌するホルモンで、脳の視床下部に作用して満腹感を感じさせ摂食を抑え、エネルギー消費の昂進をもたらし、体重を適正に保つとされる。視床下部性無月経を呈するFAT群はレプチンが低い可能性が考えられ、食事療法によりどのように変化するかを明らかにしたい。また、日本人アスリートはLEPにより体重が増加するとして服用を拒む傾向がある。これについても、LEP服用によるレプチンの変化等により明らかにしていきたい。 そこで、正常群、正常LEP群およびFAT群における継続的な血液検査データおよび骨密度データを分析し、比較検討をおこなう。そのなかで、長距離ランナー特有の特徴を見出すべく、トレーニング量(走行距離)との関連性についても検討を進めていく。 2018年度に、本研究に関連する多くの研究に精通している、米国の研究者と面談しデータの検討をおこなった。その際、先行研究データと、本研究データを比較し、米国女性アスリートと日本人女性アスリートとの基礎データの違いについては興味深い助言があった。これについて、さらなる検討をおこないたい。また、日本人FATアスリートの現状とLEP服用によるさまざまなデータの変化について、対象者の特性等を考慮しながらをまとめ、論文作成に取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が「4円」生じてしまったが、これは計画範囲内であり誤差の範囲と考える。今年度の使用計画等に大きな変更を与える額ではなく、何ら問題ないと考えている。
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