研究の背景として、様々なスポーツにおいてプロスポーツ選手(以下、プロ)を目指す子供たちは、その開始年齢が低年齢化、かつ早期高度化してきている。そのため、進学とスポーツの両立が困難となる状況が現れてきている。その一方で、JOCは引退後を念頭に置きつつスポーツと学業の両立の重視を指摘している。このような背景の中、プロを目指す子供の親は、子供の進路選択をどのように捉え、子供との関係性を構築しているかについては着目されてきていない。しかし、親との関係は、子供の進路選択に多大な影響を及ぼしていると考えられる。そこで、子供の中学校から高等学校への進路選択の決定を、親(特に父親)との関係性に着目し、どのようなプロセスを経て決定しているかを検討することが本研究の目的であった。 J1クラブのJrチームに所属する子供の父親を対象者として聞き取り調査を行い、そのデータをテキスト化し質的分析を行った。対象者である5名の父親の息子のうち、3名の選手はユースチームに昇格することができず他の選択をすることとなった。そのうち、1名は推薦入試によって進学校に進学することにより目標をプロから切り替え、1名は有名な県外のサッカー強豪校を選択し、もう1名は県内強豪校に進学した。そして、ユースに昇格した2名のうち、1名は自分の学歴レベルを下げた高校を選択し、1名はクラブから指定された高校に進学することとなった。 その結果から見えてきたのは、この選択プロセスの過程で子供任せの父は1名、あとの4名の父親は子供の競技成績(クラブ内における位置付け)を受け止めつつ、子供の主体性を尊重しながら進路選択に影響を与えている可能性が示唆された。ただし、そこには父親の学歴、スポーツキャリアや家族(母親を含め)の教育戦略、経済的格差が少なからず影響を与えていると考えられた。
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