研究課題/領域番号 |
17K01738
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
青山 清英 日本大学, 文理学部, 教授 (20297758)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | コーチング / 理論知 / 実践知 / 実践的思考 / 自然科学 |
研究実績の概要 |
平成29年度の研究課題は国際コーチングエクセレンス(ICCE)、日本スポーツ協会及び個別競技団体等が示しているスポーツ指導者の養成プログラムを検討し、その問題点を明らかにすることにあった。本研究の結果、次のことが明らかとなった。これまでのスポーツ指導者養成プログラムを見ると、スポーツ指導者に必要な知識は,自己自身や他者とのあいだで行なわれる様々な活動を客観的に理解し,省察を通して反省的に実践していくことができるための知識とスポーツ科学に関する知識であるとまとめることができた。近年の養成プログラムでは、「現場で起こりうる様々な課題をいかに対処できるようになったか」という思考・判断や態度・行動を含めた実践力を獲得することに軸足を置き、スポーツ医・科学等の知識・技能を高めつつ、現場で起こり得る実際的な課題を設定し、その課題を解決するための仮説を立て、仮説に基づき検証を行なうことで能力を高める「施行と振り返り」が考慮されていた。このように過去の反省をふまえ実践的な内容が取り上げられているものの、その「実践性」については一考を要することもまた明らかとなった。スポーツ医科学に代表される自然科学で現時点において明らかにされていない、いわゆる「前科学的」な問題は、いずれ研究が進めば自然科学によって解明されると理解されるが、このような問題は、そもそも自然科学とは異なる人間科学的の守備範囲であり、「前科学的」問題は、「先科学的知」である「実践知」によって検討されるものである。したがって、スポーツ指導者教育カリキュラムの現状を見ると、このような実践知をどのようにしてカリキュラムのなかに位置づけていくのかということと、自然科学的な理論知と実践知のどのような「協力関係」を構築していくのかという課題が浮かび上がってくることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度の研究課題は「スポーツ指導者養成機関が提示しているスポーツ指導者の資質・能力のあり方に関する調査」であった。この課題を達成するためにさまざまな関連団体のスポーツ指導者養成プログラム等を分析し、その結果は日本大学教職センター発刊の『教師教育と実践知』に「スポーツ指導者養成機関のスポーツ指導者教育における理論知と実践知」と題しまとめることができた。 本年度はさらに、平成30年度の研究課題である「東欧圏におけるコーチング学の内容とその認識論的立場に関する調査」の準備として「英語圏におけるコーチング学関連テキストの分析」を行なった。この成果は、平成30年度の研究課題をまとめる際の比較対象となるのであろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は29年度の成果をふまえて、東欧圏におけるコーチング学の内容とその認識論的な立場について調査研究を実施する。そのために、ドイツ語圏及びロシア語圏における文献収集とその分析を行なう。特に、ロシア語圏については、旧ソ連のコーチング学の流れを引き継ぐウクライナ在住のトレーニング学の第1人者のプラトーノフ氏を尋ね、共産主義時代から今日に至る東欧圏のコーチング学の展開について調査を行なう予定である。 30年度の研究成果は29年度に調査した「英語圏におけるコーチング学のあり方」とあわせて検討し、学会及び学会誌等にて発表する予定である。さらに、平成31年に日本陸上競技学会から発刊予定の『陸上競技のコーチング(仮)』においても、本研究の成果を生かせればと考えている。 平成31年度は29年度に調査・分析したスポーツ指導者養成機関における指導者養成プログラムと本年度の調査・分析結果を比較検討し、今日のスポーツ指導者養成のための学びにおける問題点を明らかにする。さらに、これまでの一般コーチング学に関する研究結果をふまえて、「測定スポーツのコーチング学」について検討する。とりわけ、「測定スポーツの分類」と「競技力の構造分析」に着手し、日本コーチング学会から発刊予定の『測定スポーツのコーチング学(仮)』の内容を検討する際の資料とする。 平成32年度については、今回申請した研究のまとめとなるので、31年度までの成果を見て、研究計画を再度研究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入の際に余剰金として残ってしまったものなので、次年度の消耗品購入にあてる予定である。
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