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2017 年度 実施状況報告書

総合型クラブの育成支援を担う複数の民間スポーツ組織の相補的関係性が創出する公共圏

研究課題

研究課題/領域番号 17K01739
研究機関日本大学

研究代表者

水上 博司  日本大学, 文理学部, 教授 (90242924)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード公益財団法人日本体育協会 / 総合型地域スポーツクラブ / NPO / 新しい社会運動 / ラディカル・デモクラシー / アドボカシー / ヘゲモニー / 公共圏
研究実績の概要

2017(平成29)年度は,文部科学省や公益財団法人日本体育協会の外部でインターネット通信インフラを活用した総合型地域スポーツクラブの育成支援をおこなってきた情報ネットワーク支援NPOと公益財団法人日本体育協会の相補的関係性を明らかにした.研究成果は,2017(平成29)年12月に「公益財団法人日本体育協会と情報ネットワーク支援NPOの相補的関係性:「動員」と「象徴的運動」の関係から創出される公共圏をめぐって」(黒須充・水上博司,体育学研究,62:491-510:早期公開は2017年6月26日)として公表した.
我が国の生涯スポーツ推進策の中核的な施策になっている総合型地域スポーツクラブは,文部科学省や公益財団法人日本体育協会がそのビジョンを公表し,地方の体育協会や加盟競技団体が施策展開の可能性を検討してきた.ところが,従来からの組織体制や制度的な制約が壁となって総合型地域スポーツクラブの施策は,国民のスポーツ実施者の急増にむすびついたという成果までには至っていない.こうした困難性を抱えた総合型地域スポーツクラブの課題や克服策の共有は,情報ネットワーク支援NPOが総合型地域スポーツクラブの間にはいって仲介することで広く総合型地域スポーツクラブ間に拡大していったことが明らかとなった.そして,情報ネットワーク支援NPOが構築した総合型地域スポーツクラブの課題や克服策の共有空間は,スポーツの政策に対する政策提言(アドボカシー)をも担うスポーツの公共圏であることをも明らかにした.本研究では,アルベルト・メリッチの「新しい社会運動論」とエルンスト・ラクラウやシャンタル・ムフの「ラディカル・デモクラシー論」を援用することで先述したスポーツの公共圏が新たな政治的主体,いわば「ヘゲモニー的形成体」としての可能性を有することを論じた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究はおおむね順調に進展している.研究計画書の初年度に研究成果を公表することができたため,研究の第2ステップ,第3ステップに必要とされる分析フレームや研究視点がはっきりさせることができた.こうした研究視点の明瞭化によって,必要な分析対象からのデータの収集が比較的順調に遂行できるようになっている.
現在,1990年代後半から蓄積された数々の分析データの収集と整理がほぼ終了しているので,これらを再度分析し直して,研究のための分析フレームを多角的な視点から検討していくことが重要である.そのために複数の民間スポーツ組織に対してヒヤリング調査を実施したり,同様の研究関心をもって研究を遂行している研究者らとの積極的な情報交換をしていく必要がある.そうした研究交流会の準備も進めており,次年度内には定期的な研究交流会を予定している.また,スポーツクラブの施策において,重要な事例となって国内に数多く紹介されているドイツのスポーツクラブ政策に関する調査も継続中であり,こうした調査データを踏まえた研究成果が公表できるように検討をしていきたい.
なお,すでに,総合型地域スポーツクラブの情報ネットワーク支援NPOの相補的関係性に関する学術論文の執筆に着手している.これまで公益財団法人日本体育協会と情報ネットワーク支援NPOの相補的関係性は検討してきたが,肝心の総合型地域スポーツクラブと情報ネットワーク支援NPOの関係性には未着手であったためである.論文投稿の準備中であるので,2018(平成30)年度中には研究成果を公表できるように研究を遂行させていたきたい.

今後の研究の推進方策

総合型地域スポーツクラブの育成支援には,今回の研究成果で明らかにした公益財団法人日本体育協会だけがその主たる推進母体になったわけではない.総合型地域スポーツクラブ間がローカルレベルの圏域をとりまとめて小さなネットワークをつくり,定期的に学習会を開催したり,周辺地域の総合型地域スポーツクラブにも呼びかけて独自のセミナーを開催するなど,総合型地域スポーツクラブがインターネット通信インフラをフル活用してローカルレベルのネットワークの中心的役割を担うようになっている.これはこれまでの情報ネットワーク支援NPOが果たしてきた役割が,全国の力のある総合型地域スポーツクラブに拡大していることでもあり,地方各所に総合型地域スポーツクラブの情報拠点が誕生していることをも意味している.こうした総合型地域スポーツクラブの情報拠点化に関する研究は,いまだ手付かずであり,それは総合型地域スポーツクラブの施策展開において,政策提言など政策立案に関与していくヘゲモニー的形成体の重要な視点の一つであると考えている.分析データは,1998年の情報ネットワーク支援NPOの設立年から2011年の東日本大震災までの約13年間を対象として,この期間に総合型地域スポーツクラブ間の関係性がどのように形成されてきたのか,また情報ネットワーク支援NPOと総合型地域スポーツクラブは,どのように形成されてきたのか,その視点をパットナムやコールマンらが論じる「社会関係資本」の概念を援用して明らかにしていきたい.これらの研究成果は,総合型地域スポーツクラブがどのような人的ネットワークを形成し,その形成に関わる構成要件は何かが明らかになり,総合型地域スポーツクラブの施策展開の次なるステップの検討材料になると考えられる.

次年度使用額が生じた理由

学術論文の投稿料として,たとえば和文から英文への翻訳料やネイティブチェックに関わる経費として次年度の使用計画に引き継いだものである.また研究者間の検討会やヒヤリング対象者への調査経費に必要な旅費として一部次年度の使用計画に引き継いでいる.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] 公益財団法人日本体育協会と情報ネットワーク支援NPOの相補的関係性:「動員」と「象徴的運動」の関係から創出される公共圏をめぐって2017

    • 著者名/発表者名
      黒須充,水上博司
    • 雑誌名

      体育学研究

      巻: 62 ページ: 491-510

    • DOI

      https://doi.org/10.5432/jjpehss.16092

    • 査読あり / オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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