研究実績の概要 |
高圧暴露がハイブリッド・トレーニングによる持久的運動能力向上に及ぼす効果を確認するため,以下のような研究を実施した。 5週齢のマウスに7週間、自発走運動を負荷した。その後、トレッドミル走によるハイブリッド運動群(HT, 20-30 m/minの速度で30分間の持久的運動後,5分間の休息をはさみ、30-42.5 m/minの速度で5秒間の走運動と10秒間の休息を30分間繰り返す)、HT+60分間高圧暴露(60HT)群,HT+30分間高圧暴露(30HT)群,HT+15分間高圧暴露(15HT)群に分けて4週間(週6日)実施した。持久的運動能力は、30HT群と60HT群で有意に増加した。15HT,30HT群ではピルビン酸脱水素酵素複合体(PDHc)の活性が顕著に増加していた。60HT群ではPDHcに加え,β-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素とカルニチンアシル基転移酵素2の活性が有意に高い値を示した。30HT群と60HT群ではAKT1(protein kinase B)の発現量が腓腹筋白色部位で,ミトコンドリア転写因子(Tfam)が左心室で有意に増加していた。これらの結果から,30分~60分間の高圧暴露は,幼若期から長期間にわたってトレーニングを積んだマウスにおいて,ミトコンドリア生合成や筋肥大の促進に関与するタンパク質発現を促進し、持久力向上に付加的な効果を示すが,脂質代謝能力を顕著に亢進するには60分間の高圧暴露が必要であることが明らかとなった。
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