本研究は,健康増進作用に対する,運動頻度の異なる2種類の運動トレーニング,および単回摂餌によるカロリー制限(calorie restriction,以下CR)の8週間の介入効果を,両者の相互作用を含めて検討することを目的として実施した.具体的には,健康増進効果が運動単独で認められる頻度(5回/週)で運動を介入した場合に対し,運動頻度をその半分(5回/2週)に減じてCRと組み合わせた場合に,運動単独条件と同等の,あるいはそれを凌駕する健康増進効果を享受する可能性があるかについて検討した. その結果,精巣上体周囲脂肪重量に,CRの有意な影響が観察されたものの,運動頻度の相違による影響は認められなかった.しかしながら血中トリグリセリド濃度に関して,運動頻度,あるいは運動とCRの相互作用が顕在化する可能性が示唆されたため,精巣上体周囲脂肪細胞内の脂質代謝関連因子や炎症性因子に着目して解析を行った.脂質分解因子のAdipose triglyceride lipase(ATGL)とHormone sensitive lipase(HSL)のmRNA発現に対する有意な相互作用は観察されなかったが,炎症性因子のInterleukin-6(IL-6)mRNA発現は,低頻度運動トレーニングとCRの組み合わせによって高頻度運動トレーニングに匹敵する亢進を示した.低頻度の運動介入でもCRを併用することで,炎症応答が抑制される可能性が示唆された.
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