研究課題
本研究では、骨格筋量および機能の維持・向上を目的とした運動刺激受容機構とその加齢性変化を解明すると共に、加齢性変化の克服策を開発し、様々なライフステージに応じた骨格筋機能の維持向上のための「適度な」運動刺激の種類と強度を提示するための基盤となる研究を遂行する。本研究の目的を達成するために、3年計画で研究を実施し、本年はその初年度に当たる。骨格筋の量的変化伴うfilamin Cタンパク質発現量の変化を検討するマウスヒラメ筋のfilamin Cタンパク発現量を検討した。その結果、ヒラメ筋におけるfilamin C発現量に後肢懸垂による萎縮の影響は認められなかったが、再荷重による再成長に伴いfilamin C発現量は有意に増加した。C2C12細胞を用いて、siRNAによりfilamin Cをノックダウンしたところ、筋タンパク量が有意に減少した。しかし、筋管細胞の形態に顕著な変化は認めなかった。骨格筋の筋核内における選択的スプライシング因子muscleblind-like 1(MBNL1)発現量に対する加齢の影響を検討したところ、速筋線維が有意である足底筋では加齢により有意に減少したが、遅筋線維が多い腓腹筋外側部では加齢による変化は認めなかった。さらに、C2C12細胞を対象に、MBNL1をsiRNAを用いてノックダウンすると筋細胞の分化が抑制された。また、PCG-1a発現量の低下も併せて確認された。また、加齢に伴いアンジオポエチンの発現量低下ならびに骨格筋内蓄積脂肪が増加することを確認した。したがって、筋核内に存在するMBNL1発現量が骨格筋における加齢性変化に関与していることが 示唆された。
1: 当初の計画以上に進展している
当初、骨格筋における加齢性変化の鍵分子として、候補分子を機械的刺激受容タンパクの候補の1つであるfilamin Cと選択的スプライシング因子であるMBNL1に設定した。まず、filamin Cに対する検討を行ったところ、骨格筋の量的変化に伴いその発現量に変化を認めたものの、C2C12細胞を用いてfilamin Cをノックダウンしても、筋管形成に顕著な変化を認めなった。したがって、filamin Cの加齢性変化が加齢による骨格筋萎縮をもたらす主要因子ではないと考えられた。そこで、次の候補分子であるMBNL1を詳細に解析したところ、加齢性変化ならびにノックダウンによる筋分化の抑制が確認された。さらに次年度以降の計画であった筋核内ストレスタンパク質の加齢に伴う挙動ならびに蓄積脂肪増加機構に関する検討にもすでに着手済みである。したがって、研究は当初の計画以上に進展していると判断できると考えている。
初年度の研究計画を踏まえて、加齢に伴う筋核内MBNL1の機能解析を進めると共に、加齢に伴うストレス応答の変容や炎症反応分子の反応に関しての解析をさらに進める予定である。また、細胞培養実験も継続して実施し、鍵となる候補分子をノックダウンすることで、当該分子の骨格筋量維持における役割を明らかにする計画である。
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Acta Physiologica
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理学療法ジャーナル
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