研究課題
本研究は、骨格筋量および機能の維持・向上を目的とした運動刺激受容機構とその加齢匹変化を解明すると共に、加齢性変化の克服策を開発し、様々なライフステージに応じた骨格筋機能の維持向上のための「適度な」運動刺激の種類と強度を提示するための基盤となる基礎資料を得ることを目的に3年計画で実施する。平成30年度はその2年目にあたり、昨年度の研究により示された「加齢性の選択的スプライシング因子muscleblind-like 1(MBNL1)発現量の変化」が骨格筋萎縮を引き起こすか、またMBNL1発現慮の変化が加齢性筋萎縮の原因であるとした場合、その分子機序は何かについて検討した。まずC2C12筋管細胞を対象に、MBNL1をsiRNAを用いてノックダウンすると筋タンパク量の増加が抑制されたが、その際にアポトーシス関連因子の増加が確認された。そこで、ミトコンドリア膜電位を評価したところ、MBNL1ノックダウンによりミトコンドリア膜電位が低下していることが確認された。また、筋核内にDNAの凝集体が多数観察された。さらに、成熟した骨格筋において、MBNL1発現量とアポトーシスとの間に関連性があるか、マウス骨格筋を対象に検討した。その結果、マウス骨格筋では、速筋である足底筋において、加齢に伴いアポトーシス関連因子の増加が認められた。しかし、遅筋である腓腹筋内側頭ではMBNL1発現量に変化は認めなかった。加齢性の骨格筋萎縮は、遅筋に比べて速筋に顕著であることから、加齢によりMBNL1発現量の低下が引き起こされ、その結果としてはミトコンドリア機能低下が惹起されることで骨格筋の萎縮をもたらすものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、加齢性骨格筋萎縮における骨格筋選択的スプライシング因子MBNL1の関与について検討し、MBNL1発現量の変化によるミトコンドリア機能低下、そしてアポトーシスの誘導という機能変化を、培養骨格筋細胞ならびに成熟マウス骨格筋で確認することができた。したがって、研究はおおむね順調に進展していると判断できると考えている。
これまでの研究成果を踏まえて、加齢に伴う筋核内MBNL1の機能解析をさらに進めると共に、加齢に伴うストレス応答の変容や炎症反応分子の反応に関しての解析を実施する予定である。そして、運動刺激受容機能における加齢性変化を明らかにし、骨格筋量と機能の加齢性変化に対する対抗策を策定するための基礎資料を得る計画である。
2,841円の余剰金が生じたが、これは計画的に必要な支出処理を行った結果、端数が出たためである。この余剰金は翌年度分の助成金と合わせて使用する計画である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 7件、 招待講演 4件)
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