研究課題
一部の白色脂肪細胞は,PRDM16をはじめとする様々な転写調節因子の作用を介して褐色脂肪細胞様のベージュ脂肪細胞へと分化することがほぼ断定された.ベージュ脂肪細胞は褐色脂肪細胞と同様に熱産生を介したエネルギー消費能を有することから,本機能を介した抗肥満療法の確立に期待が寄せられている.一方,肥満により肥大した白色脂肪細胞がベージュ脂肪細胞へと分化するかについてはよくわかっていない.我々は,持久的な走運動トレーニングが肥満個体ではないラットの鼠径部の白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞化させることを観察している.本年度は,走運動トレーニングが本研究の運動様式として適切かを明確にするために,走運動トレーニングにより変化することが報告されている肩甲部褐色脂肪細胞を指標として検討した.走運動トレーニングにより肩甲部の褐色脂肪組織量は一部の先行研究と同様に有意に減少することを観察し,この状況下において,myf5陽性の肩甲部骨格筋におけるPRDM16/PPARγやPRDM16/EHMT1の複合体の発現を介した褐色脂肪細胞化は有意に低下するが,前者の結合を阻害するTLE3の発現は有意に増加することなどを観察した.一連の結果は,我々の走運動トレーニングプロトコルが脂肪組織の変化を導く有用なツールとなることを再確認するものであり,肥満により肥大した白色脂肪細胞のベージュ脂肪細胞化の検討に応用可能であることを示唆している.
2: おおむね順調に進展している
概ね計画通りに進んでいるが,異動によって走運動用トレッドミルが無い状況にあるため,高脂肪食摂取の有無を加えた水泳運動トレーニングに切り替えての検討を予定している状況にある.走運動トレーニングを施した動物からではあるが,すでにDNAアレイ解析等から標的分子が決まりつつあることを踏まえて,脂肪細胞株を用いた検討を行っている状況である.
次年度は,水泳運動トレーニングがベージュ脂肪細胞化や肩甲部の褐色脂肪組織の変化に及ぼす影響について検討する予定である.すなわち,前年度に得られた走運動トレーニングの結果と比較することによって走運動と水泳運動の性質を明確にし,肥満により肥大した白色脂肪細胞のベージュ脂肪細胞化の検討に応用する適切な運動様式を見出す予定である.上記の検討と並行して,DNAアレイ解析等より得られた情報を元に中心的な役割を果たすターゲット分子を特定するとともに,3T3-L1細胞などを用いた過剰発現細胞株の樹立とパルミチン酸処理を介した肥大化3T3-L1細胞のを用いた検討などを介して,メカニズムの解析を試みる予定である.
実験試薬の購入に当たり割引期間に購入したものが多かった為に次年度使用額が発生したが,次年度の実験試薬の購入に充てる計画である.
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