研究課題/領域番号 |
17K01765
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
吉原 利典 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 特任助教 (20722888)
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研究分担者 |
関根 紀子 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 客員准教授 (10393175)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨格筋萎縮 / ヒストン脱アセチル化酵素 |
研究実績の概要 |
本研究では、若年期における運動刺激や不活動刺激がDNA 配列の変化を伴わない遺伝子情報として筋に記憶され、その後の筋の適応、すなわちトレーニング効果の獲得や筋肥大・筋萎縮の生じやすさに多大な影響を与えるとの仮説を設定し、組織および分子レベルでの検討を行うものである。 初年度は、まずラットの若年期における運動不足刺激が安静時代謝や骨格筋適応に関わる遺伝子の発現パターンに与える影響を明らかにするために、3週齢のWistar系雄性ラットを8-10週間の活動制限を状態に曝露し、安静時における代謝的な変化や筋表現型の変化について検討した。また、その後に運動刺激および不活動刺激を与えることにより、筋の適応に関わる細胞内シグナル伝達物質や遺伝子発現にどのような変化が生じるかについても検討した。具体的には、若年期における運動不足を模擬するために、ラットを床面積が通常の半分程度の狭いケージ内で飼育しラットの行動範囲を制限し、その際、飼育ケージ内におけるラットの活動量を自発運動量測定システム(スーパーメックス、室町機械株式会社)により測定した。結果として、長期間の運動不足刺激は若齢ラットの安静時代謝(酸素摂取量や呼吸商など)に影響を与えなかったが、下肢骨格筋重量や核内におけるヒストン修飾状態に有意な変化を与えた。また、長期間の運動不足がその後に与えるトレーニングおよび不活動刺激に与える影響を検討するために、7日間の尾部懸垂および一過性の筋電気刺激を実施した。その結果、長期間の運動不足刺激は、電気刺激後のシグナル伝達応答に影響を与えなかったが、尾部懸垂のような負の刺激に対して顕著な応答を示した。運動不足によってその後の筋萎縮が亢進するメカニズムの一旦として、ヒストン脱アセチル化酵素4の顕著な増加が関与している可能性があること示しており、今後詳細な検討を重ねる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は子どもの運動不足を模擬した若齢ラットにおける長期間の活動制限刺激が、生体に与える影響について基礎的なデータの採集を行うとともに、その後に正(筋肥大)・負(筋萎縮)の骨格筋適応刺激を与えることにより、長期間の運動不足がそのような適応にどのような影響を及ぼすのかについて検討を行った。実験は筋サンプリングおよび一部の解析が終了しており、計画通りに実験が進められていると考えられる。また、老化モデルラットの飼育、サンプリング解析もある程度終了しており、そちらは計画以上に進められている。以上のことから、本年度の実施計画についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度実施中の実験および採集した筋サンプルの解析を継続するとともに、特定の分子ターゲットの阻害剤を用いることにより、ターゲット分子が筋萎縮時に果たす役割について解明する予定である。また、国内外の国際学会において得られた研究成果を積極的に発表し、最終的には国際雑誌に公表できるように分析・解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予算の残額では購入予定の消耗品は購入できなかったため、次年度の予算と合わせて今後購入を検討していく予定である。そのため、研究計画の遅れや計画変更を表すものではない。
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