研究課題/領域番号 |
17K01765
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
吉原 利典 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 特任助教 (20722888)
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研究分担者 |
関根 紀子 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 客員准教授 (10393175)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 骨格筋萎縮 / ヒストン修飾 / サルコペニア / ヒストン脱アセチル化酵素 |
研究実績の概要 |
本年度は、加齢による筋萎縮過程には、ヒストン修飾(アセチル化やメチル化)による遺伝子制御機構が関与しているとの仮説について検証した。加齢による骨格筋萎縮モデルとして、若齢(3ヶ月齢)、成熟(6ヶ月齢)、中齢(12ヶ月齢)および高齢(24ヶ月齢)のWistar系雄性ラットを用いた。ラットの体重は加齢に伴い有意な増加が認められたが、同時に加齢に伴う相対筋重量の有意な低下、すなわちサルコペニアが確認された。さらに腓腹筋より核タンパク質を抽出し、サルコペニアに関わるヒストン修飾を検討するためにウェスタンブロットによる分析を行った結果、アセチル化ヒストンH3発現量には、加齢に伴う有意な低下が認められた。また、転写活性に関わるリジン残基9および27のアセチル化は加齢に伴い有意に低下し、転写抑制に関与するリジン残基9のトリメチル化は、加齢に伴い低下した。このことから、サルコペニアの進行には加齢に伴うヒストン修飾の変化による転写活性制御が関与している可能性がある。さらに、前年度、運動不足によってその後の筋萎縮が亢進するメカニズムの一旦として、ヒストン脱アセチル化酵素4の顕著な増加が関与している可能性があること示したが、若齢および高齢のWistar系雄性ラットに同様の負(筋萎縮)の骨格筋適応刺激を与えた結果、高齢ラットでは、ヒストン脱アセチル化酵素4および下流のGadd45αのより顕著な活性化が認められた。また、筋萎縮前の一過性の運動刺激は、高齢ラットにおいて、ヒストン脱アセチル化酵素4および下流のGadd45αの活性化を抑制する対抗策となり得ることを見出した。これらのことから、ヒストン脱アセチル化酵素4/Gadd45α経路をターゲットとした対抗策が、若年期の運動を基盤とした中年期および加齢による筋萎縮の抑制には有効である可能性が示唆される。今後も継続して分析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は前年度実施された実験の解析を継続するとともに、老化モデルラットにおいてヒストン修飾の加齢変化および高齢ラットに特異的な筋萎縮関連因子の発現に関しても解析が進められており、そちらは既に学術雑誌に投稿できているため、計画以上に進められていると考えられる。その他の本年度予定されていた阻害剤を用いた実験は筋サンプリングおよび一部の解析が終了しており、計画通りに実験が進められていると考えられる。以上のことから、本年度の実施計画についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、採集した筋サンプルの解析を継続するとともに、若年期の運動を基盤とした筋萎縮の抑制メカニズムについて明らかにしていく予定である。また、本年度は特定分子の阻害剤を使用してターゲット分子の阻害を行ったが、ターゲット分子以外への影響が懸念された。そこで、新たに習得した遺伝子導入法を用いた実験系を立ち上げているところであり、ターゲット分子が筋萎縮時に果たす役割についてより詳細に検討を行う予定である。得られた研究成果は、国内外の国際学会において積極的に発表し、最終的には国際雑誌に公表できるように分析・解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は昨年度から継続して分析・解析を行ったため、購入すべき消耗品は最小限で抑えることができた。生じた残額は次年度の予算と合わせて、次年度に計画されている実験の遂行に当てる予定である。また、本年度計画されていた実験は予定通り終了しており、研究成果の公表にも十分に費用を充当できたため、研究計画の遅れはなく、次年度に継続して分析・解析を行う予定である。
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