研究課題/領域番号 |
17K01770
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
中村 友浩 大阪工業大学, 工学部, 教授 (30217872)
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研究分担者 |
北村 憲司 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教 (40214811)
藤里 俊哉 大阪工業大学, 工学部, 教授 (60270732)
石道 峰典 大阪工業大学, 工学部, 講師 (80737536)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 三次元培養筋 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、三次元培養筋を用いて最適化された急性電気刺激によって発現が誘導される遺伝子の発現解析、および分泌タンパク質の同定を試みた。マイクロアレイによる発現解析からコレシストキニン遺伝子が候補遺伝子として同定されたので、まず、三次元培養筋における発現解析をqPCR法で解析した。その結果、コレシストキニン遺伝子は、三次元培養筋において構成的に発現し、ELISA法によって微量だが培地中にも存在していることが明らかとなった。生体筋にでは、コレシストキニン遺伝子の発現は、ほとんど観察できないため、三次元化組織特有の細胞内環境がコレシストキニンの発現を誘導している可能性が示唆された。先行研究から、コレシストキニンは急性運動後に血液中濃度の上昇が観察されるが、低酸素環境ではその影響がみられないため、三次元化組織内部の低酸素環境がコレシストキン遺伝子の発現を惹起した可能性がある。そこで、低酸素培養によるコレシストキニンの発現を解析した。その結果、1%低酸素環境でコレシストキニン遺伝子の発現が上昇することが明らかとなった。低酸素環境では、Hif-1a転写因子が安定化し、ターゲット遺伝子の発現を誘導することが知られている。Hif-1a転写因子は、下流遺伝子のプロモーター内に存在するHRE(hypoxia response element) に結合することがしられているため、コレシストキニン遺伝子のプロモータ解析を行った。その結果、コレシストキニン遺伝子のプロモータ配列内にもHREが同定された。急性運動後は、末梢筋組織の酸素濃度は著しく低くなることが知られていることから、高地滞在中や急性運動後に観察されている血中コレシストキニン濃度の上昇は一部、骨格筋由来である可能性が示唆された。以上のことから、低酸素環境や急性運動後に見られる食欲抑制症状は、一部、筋細胞から分泌されるコレシストキニンが関与している可能性を突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
低酸素環境下におけるコレシストキニン遺伝子の発現上昇が、実際の分泌動態に反映されているか、検証するまでには至っていない。予備的なELISA解析では、培養液中に微量に存在していることがわかっているが、ウエスタン解析を行うには濃縮条件を検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年は、低酸素環境下におけるコレシストキニンの発現制御を詳細に検討するとともに、その分泌動態について解析を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
候補となるタンパク質のウエスタン解析を予定していたが、培地濃縮過程の適正化に時間を要し、予定していた実験を実施することができなかった。また、候補となるタンパク質の発現が生体筋では極めて低く、低酸素環境でのみ、発現が惹起される可能性があり、動物実験での発現解析は、動物への低酸素暴露環境の適正化も行う必要が生じたため、昨年度は実施することができなかった。今年度は、まず、三次元培養筋を低酸素暴露し、実際に候補タンパク質が培地中に存在するか、解析を行う予定である。使用計画として、培地濃縮に関わる消耗品、候補タンパク質の同定を行うための抗体、試薬を予定している。
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