研究課題/領域番号 |
17K01775
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
濱西 伸治 東北学院大学, 工学部, 准教授 (00374968)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 難聴 / 打撃 / 骨導 / 剣道 / アメフト |
研究実績の概要 |
これまで筆者らは,コンタクトスポーツ愛好者に多く見られる「難聴」の原因が衝撃によって頭蓋骨を伝わる振動である「骨導」が大きな要因となっているのではないかという仮説に至った. 最近,3Dプリンタの技術を用いて衝撃を吸収できるサポーターが提案され,衝撃低減効果が確認された.提案したサポーターをプロテクターに装着すれば,打撃による骨導が低減できるのではないかと考え,本研究ではサポーターによるプロテクターへの打撃・音圧低減効果を評価するため,人頭模型・プロテクター・サポーターを用いた打撃実験を行った. 打撃実験では,石膏で作製した人頭模型を用い,人頭模型の外耳道内部に設置した小型マイクと頭頂部に埋め込んだ加速度センサにより,打突部に一定の打撃力を打突部に与えた際の衝撃音圧と加速度を,記録した.打撃実験は,人頭模型のみ,剣道の面防具やアメフトのヘルメットなどのプロテクターを装着した模型,さらにサポーターとプロテクターを併用した模型,の3パターンで実施した. プロテクターを装着した人頭模型を打撃した際の頭頂部の加速度は,模型を直接打撃した場合と顕著な差が見られず,プロテクターのみでは打撃による頭部への衝撃を低減できないことが示唆された.サポーターをプロテクターに装着した場合,約30%衝撃を低減しており,サポーターの使用により打撃低減効果が認められた. 一方で,外耳道内に伝わる音圧は,人頭模型を直接打撃した時に生じる音圧よりも,プロテクターの装着時の方が高くなった.これはプロテクターが外耳道を閉塞し,音がこもってしまうためと考えられる.サポーターを併用した場合には,ある程度の音圧低減効果が認められたが,今後,難聴を予防するためのプロテクターの開発に当たっては頭部の衝撃低減だけでなく,外耳道の閉塞を防ぐ工夫が必要であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的であるHead & Earプロテクターの試作を行い,打撃実験を進めている.さらに,3Dプリンタで製作するサポータの最適形状を求めるため,3次元CADによるモデルを作成し,シミュレーションを実施している.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた「外耳道における音圧低減」の解決を目指し,様々な形状のサポーターについてシミュレーションを行い,効果が見られるものについては3Dプリンターによる製作と打撃実験を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題で実施する有限要素法モデルを用いた打撃シミュレーションについては,様々なモデルについて解析結果を得て,Head & Earプロテクターの試作・試装を行ってきた.プロテクターによる打撃・衝撃音の低減効果をさらに効率よく解析するため,高性能な計算機を最終年度に購入し現在解析を進めている.補助事業期間を延長することにより,様々なコンタク トスポーツにおける競技者に最適なプロテクター形状を決定することが可能となる.
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