研究実績の概要 |
激しい衝撃を伴うコンタクトスポーツの選手の中には難聴患者が多くいる.これまでの研究で,難聴に陥る原因は頭部への衝撃による「骨導」が内耳や脳へ影響していることに加え,衝撃音が耳への悪影響を及ぼしているのではないかという予想に至った.そこで本研究では剣道を取り挙げ,3Dプリンタを用いて打撃・衝撃音低減サポーターを作製し,剣道打撃を想定した打撃実験による低減効果の評価を行った. 試作した2種類のサポーターの構造は,いずれも八角形の構造である.「格子状サポーター」はX,Y,Zの3方向を八角形で格子状にくり抜いたものである.「クモの巣状サポーター」は八角形を放射状に配置して,8方向の側面から八角形でくり抜いたものである.石膏で作製した人頭模型を用い,頭頂部に加速度センサを取り付け, 左耳の外耳道内部に小型マイクを取り付けた.一定の打撃力を90°の角度よりハンマーを振り下ろして打突部に与えた.それをオシロスコープによって,石膏のみ,面防具のみ,サポーターを装着した面防具のパターンで5回ずつ電圧の波形をとり,波形のピークの振幅値を使い,それらの平均を加速度と音圧に換算した. 格子状サポーターを装着した面防具は面のみの時の加速度から37.5%低減した.また,クモの巣状サポーターは28.5%低減した.格子状サポーターを装着した面防具は面のみの時の音圧と比較するとあまり変化がなかった.これはサポーターが3方向からくり抜かれているため,緩衝効果は得られたが,空洞が多いことにより,打撃音が漏れてしまうことが原因だと考えられる.一方,クモの巣状サポーターは面のみの音圧より約7.2dB低減させることが出来た.これはクモの巣状サポーターは格子状サポーターよりも側面の空洞が少なく,壁も多いため,緩衝効果を保ちつつ,音を低減させることが出来たと考えられる.
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