東日本大震災により心的影響を受けた子どものサポートは、教師の心的健康に支えられているが、実際にはストレス反応を呈し適切な支援ができない教師がしばしば見られる。教師にストレスマネジメント能力を習得させることは、被災地を含め学校を機能させるための大きな課題となっている。そこで本研究では、教師の学校ストレスに関する諸相を明らかにし、ここで得られた知見を用いた教師のメンタルヘルス研修会を開催し、その効果を検証することであった。 (1)教師が経験する学校ストレッサー:教師の経験する学校ストレッサーについて、その一般性と被災地の特殊性をともに考慮しながら、その構造と状態を明らかにした。暫定尺度を用いて、200人を対象に調査を行い因子分析により先行研究とは異なるストレッサーの構造を探索しこれを尺度化した。 (2)教師の対処行動:次に教師の選択し得る対処行動をLazarus & Folkman(1984)と認知行動療法の知見を基に、その構造と諸相を明らかにした。暫定尺度を用いて調査を行い、探索的因子分析を基に測定尺度を作成した。そこでは従前の研究成果とは異なる、やや情報が圧縮され単純化された観点が示された。 (3)ストレス反応の決定要因:教師が経験する学校ストレッサー及び対処行動並びにストレス反応の関係を明らかにすることでストレス反応低減に有効な要因を明らかにした。そこでは,東日本大震災により大きな被害を受けた地域への勤務の有無による,ストレッサーや対処行動,ストレス反応の異同についても検討され明らかにされた。 (4)教師対象メンタルヘルス研修会(啓発活動)の実施:上記の成果を基に研修会プログラムを作成し,これを実施し,研修会のいずれの要素がストレス対処の自信をもたらすのか検証された。
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