最終年度も実施計画に沿って発達障害学生へのピア・サポート活動の実践を継続しつつ,研究期間全体の研究成果のまとめを行った。まず,前年度に実施した自閉スペクトラムの傾向を有する学生のストレス特徴に関する質問紙調査結果について学会報告を行った。調査では自閉スペクトラム障害の学生は勉強で困っても誰にも相談できないことがうかがわれた一方で,ネットや本の利用には親和性があり,大学の相談窓口がリソースになりうることが示された。これらの結果から,対人関係や勉強,進路のストレスを抱えた自閉スペクトラム障害の学生をネットを活用して大学の相談窓口につなぎ,そこから専門スタッフやピア・サポートへの支援と繋げていくことが有効であることが示唆された。 次に,研究期間をとおして実施してきた,発達障害学生へのピア・サポートによる居場所支援と学習支援の効果について学会報告と論文化を行った。障害学生への面接やサポーターとなった学生への面接調査等から,発達障害学生が自由に休憩や勉強ができるスペースに臨床心理学を専攻する大学院生をサポーターとして配置した居場所支援は,障害学生のコミュニケーションスキルの向上に有効であることが示唆された。さらに,サポーター学生が定期的に障害学生が苦手とする科目の学習の個別支援を行う学習支援は,障害学生の自己効力感と援助要請スキルの向上のみならず,サポーター学生にとっても教育的意義があることが示唆された。
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