研究課題/領域番号 |
17K01783
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
塩谷 英之 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (00294231)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 朝方勤務 / 自律神経活動 / 身体活動 |
研究実績の概要 |
(1)朝型生活と夜型生活の健康に及ぼす基礎的検討 22時以降に夕食を摂取し、朝食を摂取しない生活習慣を「夜型生活」と定義し、それに当てはまる若年健常者8名と、1日3食摂取し、特に夕食を22時以前に摂取する、規則正しい生活習慣を持つ若年健常者6名を朝型生活群とし、比較検討した。24時間心電図測定及び血圧測定、並びに睡眠に関する質問票を両群で施行した。心拍数、lnHF、LF/HFにコサイナー法を用いて周期回帰曲線を求め各指標の中間値、振幅、位相時間を算出した。さらにlnHFの1時間毎の生データ平均値を比較した。 (結果)周期回帰曲線から、夜型生活群で心拍数、lnHF及びLF/HFの位相時間が有意に遅延していた。さらに夜型生活群で睡眠時のlnHFの低下が見られた。また、夜型生活群のPSQI-Jの総合得点は有意に高く、MEQの総合得点は有意に低かった。本研究により夜型生活群では、生活習慣が遅延し心拍及び心臓自律神経系の概日リズムの位相を遅延させることが示唆された。また、睡眠時間の低下は見られなかったものの睡眠の質の低下及び睡眠時の副交感神経活動の低下が示さた。 検討2 伊藤忠商事株式会社(以下ITC)で朝型勤務に従事する就業者100名、伊藤忠系列会社で従来の勤務形態で働く就業者100名に対し、質問票による予備調査を行なった。 (結果)ITCは系列会社に比べ、出社時刻、退社時刻、起床時刻、朝食時刻及び就寝時刻で有意に前進していることが示された。ITC及び系列会社の睡眠及び健康感に関する質問票の比較では、ピッツバーグ睡眠質問票、朝型夜型質問票、3次元型睡眠尺度、SF-36v2の全項目に関して有意な差は認められなかった。しかしSF-36v2におけるITCと国民標準値との比較では身体機能、日常役割機能(身体)、体の痛み、全体的健康感の項目でITCが有意に高値を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
朝型生活と夜型生活の比較では両群において睡眠時間には有意な差が認められないにもかかわらず、夜型生活者で睡眠の質の低下及び睡眠時の副交感神経活動の低下が見られたことから、朝型生活の睡眠あるいは心臓自律神経活動リズムへの好影響が確認され、朝型生活が健康に良いという当初より想定していた結果が得られたものと考える。 一方で実際の勤務形態の違いによる質問紙を用いた予備調査では、勤務形態による明らかな差は確認できなかった。この結果についてはやはり質問紙調査の限界を示すものと考え、当初から計画していた身体活動計を用いた詳細な検討が必要と考えられ、現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
新たに両社の就業者各30名に対し、身体活動計を用いて身体活動リズム(ZC)を測定を行い、詳細な検討を行う。身体活動計(リストバンド型生活モニタ装置:株式会社日立システムズ社製 ライフ顕微鏡)の平日5日間の装着、及びその間の行動について行動記録表に記入してもらい調査を行い、身体活動計による身体活動リズムの測定から得られた身体活動頻度(ZC)データは、最小二乗法を用いてコサイン曲線へ回帰した曲線を算出し、位相時間、振幅などを算出して、身体活動をリズムとして客観的に評価する。この身体活動リズム結果を中心に睡眠、健康感を評価する質問紙結果を総合評価することにより、 朝型勤務の健康に及ぼす影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の学会発表が当初予想していたよりも遅れたものがあり、平成30年度発表に予定を変更したため学会発表費として使用予定である。また英文論文の作成が若干遅れているが、30年度には2つの英文の作成を予定しており、論文作成、掲載費用に用いる予定である。
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