研究課題/領域番号 |
17K01787
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
山本 正嘉 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 教授 (60175669)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 登山 / 事故防止 / 体力 / トレーニング / 体力テスト |
研究実績の概要 |
登山は日本で最も親しまれているスポーツのひとつで、老若男女を問わず愛好者が多い。一方で、登山事故が増加の一途をたどっている。申請者らはこれまで、基礎体力(特に筋力、心肺持久力)の不足がその要因であることを明らかにしてきた。登山事故が起こる主要因として、体力不相応の登山コースに出かけてしまう人が多いことがあげられる。このような事故を防止するためには、①当該の登山コースの体力的な負担度を明らかにすること、②自分の体力を簡易に自己評価できるテストを構築し、①と②とをマッチングさせることが必要である。加えて、③普段からの体力トレーニングも重要である。これまでに①と②について検討を行ってきて、おおよその目処がたった。そこで本年度は、②と③を中心に検討し、以下の成果を得た。 1)申請者らが実験的に明らかにした、登山コースの体力度を科学的な数値で示すための「コース定数」が、長野、新潟、山梨、静岡、岐阜、群馬、栃木、山形の8県において取り入れられ、これらの県のホームページには、主な登山コースの「グレーディング表」が提示された。またガイドブックにも、コース定数が掲載されるようになった。 2)週に1回、上り下りがそれぞれ500m程度の低山登山を励行することで、筋力、敏捷性、バランスなど多様な体力が著しく改善されること、メタボリックシンドロームの罹患率が低値を示すことを明らかにした。またこのような登山をしている人では、平地でのウォーキングや水中運動など、これまで健康スポーツの代表と見なされてきた種目を励行しているよりも、効果がより大きいことを明らかにした。 3)筋力、バランス能力、敏捷性、柔軟性など登山に必要な体力を総合的に改善できる「登山体操」を開発した。この体操は、国立登山研修所や日本山岳ガイド協会のホームページにも掲載され、普及が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者の研究成果に基づいた、登山コースの体力度を科学的な数値で表す「コース定数」が、関東甲信越各県のホームページに「山のグレーディング表」として掲載されたり、登山のガイドブックに掲載されるようになり、社会への普及が進んでいる。「山のグレーディング表」については、長野、新潟、山梨、静岡、岐阜、栃木、山形の8県で取り入れられた。また日本語版だけではなく、海外からの登山者にも利用できるよう、英語版、韓国語版、中国語版も製作された。石川県や高知県では、それぞれ白山、石鎚山の各コースで、グレーディングが導入された。 登山に必要な体力を総合的に改善する「登山体操」についても、国立登山研修所や日本山岳ガイド協会のホームページにも掲載され、普及が進んでいる。加えて国立登山研修所では、高校生山岳部員の指導者向けのテキストを作成したが、この中に上記の情報が紹介されている。以上のように、本研究の進捗状況はほぼ順調である。
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今後の研究の推進方策 |
前記のように、本研究の社会への普及は順調に進んでいる。また今後とも、国立登山研修所、日本山岳ガイド協会からは、引き続き本研究成果の情報発信に力を入れてくれるとの約束を得ている。今後は、各県の山岳団体にも成果を発信していく予定である。
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