地域在住高齢者に対する咳嗽力向上を目的とした吸気筋トレーニングと最大呼出練習の長期効果を検証した。歩行が自立した地域在住高齢者60名を吸気筋トレーニング群20名、最大呼出練習群20名、対照群20名の3群に割り付け、吸気筋トレーニングと最大呼出練習(1日5回、週5日以上)を自宅にて非監視で1カ月間実施させた。トレーニングを完遂し再測定が実施できた対象者(吸気筋トレーニング群12名、最大呼出練習群15名、対照群17名)に対して、介入開始から4カ月後、12カ月後に再測定を実施した。測定項目は、咳嗽力(咳嗽時最大呼気流量)、努力性肺活量、呼吸筋力(最大吸気圧、最大呼気圧)、Timed Up and Go test、30秒立ち上がりテストとした。4カ月後および12カ月後の対象者数は、吸気筋トレーニング群9名(4カ月後)、8名(12カ月後)、最大呼出練習群12名、11名、対照群16名、15名であった。2要因(群と時期)における分析を行った結果、咳嗽時最大呼気流量、努力性肺活量、最大吸気圧に交互作用は認められず、最大吸気圧の時期要因のみ主効果が認められた。最大呼気圧、Timed Up and Go test、30秒立ち上がりテストには有意な交互作用が認められ、時期要因に単純主効果が認められた。要因別の分析では、最大呼出練習群における咳嗽時最大呼気流量の時期要因、吸気筋トレーニング群および対照群における最大吸気圧の時期要因に主効果が認められた。すなわち、吸気筋トレーニング群および対照群の吸気筋力は経過とともに増大したが、咳嗽時最大呼気流量は増大しなかった。これに対して、最大呼出練習群の咳嗽時最大呼気流量は4カ月後に増大を示したことから、1カ月間の最大呼出練習は4カ月後までの咳嗽時最大呼気流量を向上させる可能性があることがわかった。
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