研究課題/領域番号 |
17K01796
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
大西 司 昭和大学, 医学部, 准教授 (30266093)
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研究分担者 |
飯塚 眞喜人 昭和大学, 医学部, 准教授 (40274980)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | COPD / 多職種 / 患者教育 / フライングディスク / 増悪予防 |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対し多職種(医師、看護師、理学療法士、栄養士、在宅酸素業者)による患者教育の効果を検討して来た。理解を深めることで増悪を予防し、意欲の改善、QOLの改善が期待された。毎年実施して来た春と秋の講習会(多職種による勉強会)、フライングディスク大会(体育館で行うフリスビーを用いた競技)は順調に2019年秋の会までは行なってきている。(2020年春の会は、コロナ肺炎の流行のため延期している) 患者さんに対する理解度の調査は多職種でそれぞれの専門を生かして作成したアンケートを用いて、教室参加者、薦めても希望されない非参加者に行い、教室参加者が非参加者に比較して理解度が高いことを確認している。これは日本呼吸器ケアリハビリテーション学会で発表した。これを元にアンケートに対する回答を冊子化する準備を協力して進めている。 フライングディスク大会において、研究費で購入した、酸素飽和度のモニタリングシステムを利用して、フライングディスク試行前後の酸素飽和度、バイタル、息切れの程度を記録して、それを事前に行った6分間歩行検査との比較を行った。結果として、より安全に競技ができることが証明され、また運動による、低酸素の状態を早期に確認することができ、酸素療法の適応を考慮できる症例も認められた。この結果は、日本呼吸器ケアリハビリテーション学会で発表するとともに、2019年11月14日から17日に開催された、アジア太平洋胸部疾患学会(APSR)で発表し、論文化して同学会誌に投稿中である。今後、今までのデータや患者の情報を再確認し可能であれば増悪予防の効果について総合的な評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今まで継続してきた春と秋の患者教育の効果を見る研究であったので、年に二回行う教室実行の体制は整っていた。このため研究開始後3年間は順調に教室の継続と、評価は行えてきた。理解度を調査するアンケートに関しては、この研究を進めていくうちにミーティングの中で必要と考えるに至ったもので、それぞれの職種で知恵を出し合い、熟慮して作成したもので、完成度の高い独自のものを作成することができた。また多くの患者さんや、医療者の協力を得て実施、解析することが可能となった。教室に参加した患者さんほど理解度が高く、より自分の病気のことを前向きに捉えていることがわかった。フライングディスク競技前後の酸素飽和度やバイタル、自覚症状の調査もこの研究を進める上で必要と考え行われており有用な結果を得ることができた。安全に活動性を増す意味で、COPD患者さんに実施するには有益な活動と考えられた。増悪に関する評価は十分できていない点ではあるが、印象としては教室に参加する患者さんは、自己管理がよくできているため、入院管理となることも少なく、増悪にも自分で対処ができている。患者さんが高齢でもあり、ガンなどの他疾患の発生や、老化の影響もあり通えなくなる患者さんもあるが、概ね生涯を全うできたと感じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究に関して3年間の実施が終わった時点で、コロナ肺炎のアウトブレイクが出現し、教室の開催が延期となっている。今回の研究がどのように今後の研究につながるか、おそらくどのように患者教育を行っていくか、どのように自己管理を行い、自分でリハビリを進めていくか、大きな岐路に立っている。集団で集まることが困難な状況でこれらのことを実践するには、家庭や地域での小規模な実践が必要となり、また診療所や保険機関、病院との連携が必要となると思われる。病気と上手に付き合うという意義は今回の研究で十分確認されたので、それをこれからどのように社会に繋げていくかがこれからの課題となる。インターネットなどの電子媒体での教育や評価、管理も今後求められてくるものと思われる。今回の研究がそれだけに止まらずに、何らかの実践を行えるように繋げていくことが、今後の課題である。与えられた一年は、このことを検討していく時間となり、今までの経験に根ざした新しい取り組みができることを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今回の研究では大きなものとしてはフライングディスク前後のモニターで使用した機器や学会発表で使用した旅費であった。 会の準備や活動の中で自前で行なったところもあり、予算をあまり使用しなかったところもある。次年度は今までのデータの集計やまとめ、学会論文作成費用に充てるとともに、今後の発展に寄与できることがあれば活かして用いたいと考えている。
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