本研究は,医療機関受診時に困難を抱える発達障がい児に対して,オノマトペを用いた構造的アプローチ法を開発することを目的として実施した。 2019年度に実施した発達障がい児の物理的環境に関する文献検討結果を2020年度に入り,第67回日本小児保健協会学術集会にてポスター発表を行った。2019年度~2020年度は,コロナ禍の状況下,介入研究に向けた検討を控える代わりに発達障がい児の行動に影響を与える環境因子の調査を継続的に実施した。発達障がい児に専門的に関わっている施設に勤務する医療従事者(看護師,医師など)876名を対象に自記式質問紙を郵送した。その結果,発達障がい児が安心できる環境因子として,音の出る玩具があると良いという一方で,音を遮断する静かな環境,赤ちゃんの泣き声が聞こえないなどが提示された。一般的な小児科外来と異なる特徴として,音声刺激の種類別に聴覚過敏に配慮する環境調整の重要性が示唆された。本成果について,2演題発表を行った。国際学会は,The 59th Annual Convention of the Taiwan Psychological Associationにて,オンデマンド形式における口頭発表であった。発達障がい児において感覚過敏は頻繁に生じるが,その種類は当事者によって異なる。聴覚過敏に使用される,耳栓,イヤーマフ,ヘッドホンがよく活用されているが,個人スペースではない待合室などにおける環境の工夫が課題として抽出された。加えて,室内環境では,色彩,音,光,空間など,感覚刺激に関連して特定の項目に苦手意識がある発達障がい児の存在が示された。今後どのように環境を構造化し整備していくことが望ましいのか,言語的アプローチを含む支援の検討も併せて課題として挙げられた。
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