受動喫煙(CS)による肺の免疫で重要な役割をしている肺胞マクロファージ(AM)とアレルギー発症の関係について、マウスに副流煙を喫煙後、日本スギ花粉(CJp)を気管支内投与し、CJpによる免疫応答の分子機構に対するCSの影響について検討した。喫煙曝露後、マウスにCJp 500 μg投与後、気管支肺胞洗浄(BAL)を行い、BAL細胞を回収した。CJp気管支内投与によりBAL細胞の好中球数の有意な増加が認められ、肺にNeuが誘導されることが示された。喫煙群では、CJp気管支内投与による好中球の肺胞腔への流入は減少した。そこで、肺組織切片を作製し、病理組織学的に肺組織を観察したところ、細気管支部位に吸入された、取り込まれたスギ花粉周囲に好中球の浸潤が認められ、また肺間質部位にも好中球の浸潤が認められた。さらに、細血管周囲にも好中球の浸潤が認められ、血管周囲炎が認められた。喫煙群では、非喫煙群に比較して、肺炎症の程度がより強く認められ、喫煙によるスギ花粉吸入によるアレルギー炎症の増悪が認められた。この結果は、CJp気管支内投与によるAMの細胞内のIL-4発現のCSにより有意な増加と、IL-4産生の機構に関わる因子であるIL-12とTGF-β mRNA発現が、CSによりIL-12発現が抑制され、TGF-β発現が増強され、アレルギー炎症が増悪されたことによると考えられる。また、Th2ヘルパーT細胞Ⅱ型(Th2)への分化を誘導する転写因子であるGATA3の発現が、CSにより増加したことが、IL-4産生増強に関連していることが示唆された。CS曝露により肺胞マクロファージを介し、スギ花粉アレルゲンに対する肺でのアレルギー反応が増悪される可能性を示していると考えられる。
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