研究課題/領域番号 |
17K01809
|
研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
今井 具子 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (00393166)
|
研究分担者 |
大塚 礼 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, その他部局等, その他 (00532243)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ITCアプリケーション / 健康教育 / ポピュレーションアプローチ / 食事診断 / インセンティブ |
研究実績の概要 |
本研究は申請者らが開発したiPhone及び スマートフォン用健康管理アプリから、ITC を用いたライフステージ・健康課題に応じた個人対応の健康サポートシステムを構築し、運用することである。 2017年度は若年女性をターゲットとしたアプリ利用継続を促す新機能(野菜育成コンテンツによるインセンティブ付与)の追加と、ITCを用いた定期的な情報発信(3か月間毎日のミニコラムの発信)を行い、利用状況の把握と有用性の検討を行った。アプリ開発時から2017年11月末までの蓄積データ(n=7366)を解析すると、アプリ登録者の16.4%が男性、83.6%が女性であり、年代別では男性では20歳代 (22.3%)、40歳代 (21.2%)、50歳代(21.4%)が同程度に分布しており、女性では20歳代の登録者が最も多かった(46.9%)。次いで30歳代であった。今年度の新規登録者数は月平均26.7人であり、ICTを使った健康管理、食事記録の需要がうかがわれた。アプリ利用日数が3日未満の登録者が76%である一方、2015年までに登録した者のうち本年度も継続して利用した者の年間利用日数の平均は25.1日であった。60歳代以上の男性利用者では全ての年代よりも有意に利用日数が多く、BMI別にアプリ利用日数を昨年度と今年度で比較すると、痩せと肥満者で利用日数が有意に多かった。また、過去3年間と今年度を比較すると、1日の利用回数は男性と肥満者で今年度の利用が有意に多かった。 Webアンケート(n=67)より、新たに導入した野菜育成コンテンツやミニコラムが健康作りに参考になり、健康を意識づけ、食事記録を続ける意志を向上させる効果があることがわかった。一方、これらの新機能を利用しなかった登録者も一定数いることから、疾病等を有しない一般のアプリユーザーの健康作りのサポートには、さらなる仕組み作りが必要であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2017 年度実施予定であったアプリの料理データベースの見直しについては、国立表寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)の2010 年から2012 年に実施された約2000 人分の第7 次食事データ(3日間食事記録)に料理コードを付与する作業を行っている最中である。食事データは個人の食生活により多様であること、延べ6000人の食事データは多岐わたることから、料理の統合が困難であるため本年度内で料理コードを付与することは不可能であった。そこで、研究期間終了1年前までに料理コードを完成させ、研究期間内に料理データベースの見直しを完了するように研究計画を見直し、研究を継続していくこととした。 妥当性の検討については、1日の食事をアプリで登録し、写真を登録することは一般の利用者には困難であり、対象者の参加が限られた。そこで普段料理写真を登録し、自分の栄養管理の一環として利用している利用者の同意を得て、これらのデータも妥当性検討に用いることとした。現在登録者の写真データより、食事データを作成し、解析を行っている最中である。 一方、iPhone からスマートフォンへのアプリの拡充は完成しており、同等の支援がiPhoneでもスマートフォンでも利用できるようにした。また。本年度は若年女性をターゲットにアプリ継続利用のための取り組みとアプリ改良を行い、有用性向上のための取り組みの状況をまとめた。これらの結果は2018年度の栄養改善学会等で発表する予定である。本年度の取り組みから、野菜育成コンテンツのような楽しみながらアプリの継続利用促進ができるしかけが必要なこと、様々なITCツールによる健康に関する定期的な情報発信が求められていることが明らかになった、これらのことを踏まえてシステムの拡充が必要であることが明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度はアプリの食事診断ツールとしての妥当性の検討研究と、NILS-LSA第7次食事データに料理データを付与する作業を継続させながら、同時に以下の研究を行う予定である。 中高年男性を中心にアプリ利用者から希望者を募集し、メタボリック・シンドローム予防を目的とした介入研究を行う。この研究ではメタボリック・シンドロームに焦点をあて、対象者を絞り、個人対応の情報提供と健康づくりの支援を行う。この結果を、ITC を用いたライフステージ・健康課題に応じた個人対応の健康サポートシステムの構築の基礎資料とする。現在、事業所との連携を模索しており、2019年度には1企業での職域での健康づくりのツールとして実際に活用し、有用性の確認をする行うことを予定している。 また、当初の研究計画では実施が困難であったライフステージである子供に対してのアプリの有用性の検討も予定している。教育委員会と連携し、小中学生を対象としたアプリによる健康づくり活動を行う予定である。この活動では小中学生に健康を自己管理する能力を獲得するためのツールの1つとしてこのアプリを継続使用する予定である。小中学生は全員に配布されたデバイスを自由に使うことができ、ICTを用いた食育の有用性に検討行う。 最終年度にはこれらの研究成果を統合し、アプリとSNS を駆使したITC を用いた様々なライフステージに応じた健康サポートシステムの構築を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は妥当性の検討のための料理写真から食事データへのデータ入力のための人件費を使用しなかったため、その分が余剰となった。来年度に食事データ入力のための人件費として使用する。
|