令和元年度は,気象データの空間代表性の問題を解決する手法の検討として,領域気象モデルWRFにより,200m空間解像度で気温分布のシミュレーションを行い,土地利用の違いが気温に与える影響の違いについて検討した.その結果,高知県では都市化することにより,最高気温で約0.5℃,最低気温で約2.0℃上昇することが明らかになった. 同様に,領域気象モデルWRFにより相対湿度分布のシミュレーションを行い観測した気象データを用いて精度検証を行ったが,良い結果が得られなかった.そこで,空間解像度が5kmの気象庁メソ数値予報GPVデータの相対湿度データを高解像度化する手法を検討した.相対湿度分布の高解像度化までは達成できなかったが,相対湿度と関係が強い可降水量に関して,平成29年度に開発した可降水量分布の高解像度化手法を改良し,より汎用性が高いものとすることができた. 次に,65歳以上と65歳未満とで人口10万人当りの熱中症搬送者数と熱中症発生日の日最高気温・日最高WBGTとの関係の都道府県毎の違いを検討した.その結果,65歳以上が65歳未満よりも3℃以上も低い日最高WBGTで熱中症が発症する可能性があることが示された. 期間全体を通して,地域毎の自然環境・社会環境特性の把握として,市町村ごとに国勢調査等の社会統計データを整備し,国土数値情報土地利用細分メッシュデータを用いて各市町村単位で土地利用状況を把握した.また,気象庁の気象観測データ収集及び市街地と郊外において独自に定点自動気象観測を実施した.これにより,市街地及び郊外などの観測点ごとの温熱環境の違いを把握した.次に,自然環境・社会環境特性の把握により整備したデータを用いて,領域気象モデルWRFを用いた詳細な気温分布のシミュレーションを試み,気象データの空間代表性の問題を解決する手法を検討した.
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