研究実績の概要 |
申請者は、東京大学医学部大学院医学系研究科生体情報学教室浦野泰照教授らが開発された蛍光プローブが癌特異的に光ることが報告され、共同研究に至った。申請者は病理専門医であり、特に甲状腺癌を主体とした甲状腺疾患の病理診断を専門としている為、蛍光プローブを甲状腺癌に応用し研究を進めた。研究は甲状腺原発悪性腫瘍の中でも最も頻度の高い乳頭癌を対象にし、300種以上ある蛍光プローブの中から甲状腺乳頭癌特異的蛍光プローブの選定から始まった。申請者が非常勤医師として勤務する国家公務員共済組合連合会虎の門病院で倫理申請が受理され(受理番号936)、甲状腺乳頭癌手術検体に対して蛍光プローブ法を実施した。その結果、甲状腺乳頭癌に特異的に光る蛍光プローブが存在し、臨床検体に応用出来る事を見出し報告した(Hino R et al, Rapid detection of papillary thyroid carcinoma by fluorescence imaging using a γ-glutamyltranspeptidase-specific probe: A pilot study. Thyroid Research 2018)。このプローブは甲状腺炎や甲状腺非腫瘍性疾患である腺腫様甲状腺腫には光らず、甲状腺悪性腫瘍である乳頭癌に特異的に光る事が判明した。今後は、良悪の判断がしばしば困難である濾胞癌に注目し、特異的プローブ検索を続けていく予定である。さらに、今回は甲状腺手術症例総計23例の検討に留まったが、200例以上の臨床症例を用いて今回証明された甲状腺乳頭癌特異的プローブの有効性について証明していきたいと考えている。この新しい甲状腺癌検査法は、迅速、簡便であり癌特異的である事から、癌の迅速で確実な検出につながり医療検査学的あるいは社会的貢献度は高い。
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