研究課題/領域番号 |
17K01826
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
川口 英夫 東洋大学, 生命科学部, 教授 (50416921)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 心身の健康 / メンタルヘルス不調 / 予兆把握 / 筆跡情報 / 予防 / 介入 / 運動習慣 / 栄養習慣 |
研究実績の概要 |
ボランティア学生115名(2年間通しての参加者108名)に、年1回4月にデジタルペンを用いた内田クレペリン検査、生活習慣を測定する質問票DIHAL.2、食習慣を測定する質問票BDHQに記入していただいた。取得した筆跡の時間情報からストローク間隔時間比を指標として、指標の値が10以上の人を高リスク群、それ以外を低リスク群に分けた。さらに、1年次から2年次に低リスク群から高リスク群に移行した群を『悪化群』、1年次と2年次に低リスク群であった群を『良好群』と定義した。 1年次における参加者のメンタルヘルス不調のリスクの指標値について、悪化群は良好群と比較して有意に高かった(p < 0.01)。1年次における最近の健康状態の自己評価では、悪化群は良好群と比較してあまり健康でない人が有意に多かった(p < 0.01)。また、DIHAL.2の各尺度スコアでは、良好群は悪化群と比較して運動、休養、生活習慣、身体的健康度、運動行動・条件、運動意識、休息と睡眠の充足性のスコアが有意に高かった(p < 0.05)。1年次におけるBDHQによる栄養素および食品群の摂取割合では、悪化群は良好群と比較してエイコサジエン酸(n-6系多価不飽和脂肪酸)と肉類の摂取割合が有意に高かった(p < 0.05)。これらの結果を用いた多重ロジスティック回帰分析の結果、1年次における運動行動・条件のスコアとエイコサジエン酸はメンタルヘルス不調のリスクの移行と有意に関連していることが分かった。 以上の解析結果から、良好群と比較して1年次における悪化群の運動と休養のスコアが低いことから、運動行動が低く、運動条件に恵まれず、運動意識が低い、そして睡眠は十分でなく休息が取れていない傾向があることが示された。さらに、運動することとエイコサジエン酸の摂取を控えることが介入手段になり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、メンタルヘルス不調のリスクが高い場合そのリスクを低減する要因を、大学入学から卒業までの4年間のコホート調査(追跡調査)で抽出し、個人が実行可能な対処法に昇華させて提示することにある。実際に当初の予定通り、ボランティア学生を対象とした調査を2年間実施して統計的に検討し、メンタルヘルス不調のリスクを低減する要因の抽出を試みた。さらに、本研究の成果を国際学会等で発表し、外部評価を受けることで研究方針が妥当かどうか検討したため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の参加者115人(ボランティア学生)について、引き続きコホート調査(追跡調査)を実施する。この調査で、大学生として4年間過ごす中でメンタルヘルス不調のリスクを低減する要因を抽出すると共に、個人レベルで実行可能な対処法に繋がるか検討する。 過去の調査結果で高リスクに該当した人が低リスクに変化した場合、逆に低リスクに該当していた人が高リスクに変化した場合、契機となった要因を統計的に解析することで、単なる要因分析ではなく因果関係も含めた分析を実施する。さらに、最終年度である平成32年度は、4年間を通して蓄積したデータを全体を通して見渡した解析を実施する。 各年度で本研究の成果を国際学会等で発表し外部評価を受けることで、研究の方向性が妥当かどうか常に見直しながら研究を推進する。
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